ラ・カンパネラ ページ2
no side
右目に眼帯をつけている黒髪の少女は自席の机に肘をつきながら、日が沈みかけた夕日を眺めていた。
その後ろでは、クラスを牛耳っている女子生徒に押し付けられたであろう掃除当番をしている地味めの女子生徒が一人。
その女子は眼帯の女子を気にしているのか、チラチラと視線を向けているが、眼帯の女子は何も気にすることも無くただ銅像のように夕日を眺めているだけだった。
時計の秒針が刻まれていく音と、箒が床を擦る音が交互に聞こえているまるで無の時間が続く。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
地味めの女子は教室の後ろ半分は掃除し終わったようで、
教室の前半分を掃除し始めた。
眼帯の少女はもうほとんど沈んで見えなくなった夕日をまだ眺めていた。
「……あの」
この微妙な気まずさに耐えきれなくなったのか、箒を両手で持ちながら、地味めの女子は眼帯の女子に話しかけた。
眼帯の女子はゆっくりと目線を声の方に向け、無言で地味めの女子を見つめた。
「…気まずかったですよね。こんな、地味な女が目の前で掃除してごめんなさい」
「……いや、別に気になんない」
「あ、そ、そうですよね！たかが掃除当番ですし！」
そう言った後に ごめんなさい ともう一度謝った地味めの女子は、慌てた様子で掃除を再開し始めた。
「…林檎さんは、キラキラ女子に舐められたりしないんですか」
地味めの女子が再度口を開き、眼帯の女子に向かって林檎さんと呼んだ。
眼帯の女子は、林檎と言うらしい。林檎A。
「…きら、きら？」
「はい…あの、山西さんや野村さんの様な、少し騒がしい人達」
「ああ、別に…あなたの名前何だっけ」
地味めの女子の質問に対して曖昧な回答をした後、地味めの女子は林檎が自分の名前を聞いたことに対して、目が潤んだ。
「覚えてくれてないんですね……飴屋です。飴屋マチ」
地味めの女子は重たい前髪を撫でながら、飴屋マチと名乗った。
林檎は飴屋の名前を聞くと そっか と一言ぽつりと呟き、夕日が沈みきった空をまた見始めた。
「……掃除当番押し付けられて可哀想とか、地味とか醜いとか思わないんですか」
飴屋は俯きながら会話を続けた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：川畑。 | 作成日時：2023年9月10日 13時
