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9 神楽小夜 ページ12




「かはっ!!」

ハル...いや違う、女の蹴りが腹部に直撃し、
激しい痛みが走った。
衝撃で体勢が崩れてしまう。

わかってる、動かなきゃ死ぬってことは。
黒き獣を狩るのがWeiβの使命。
ミッションから逃れられない。

...でも俺にはできない。
目の前には大切な人がいるんだ。
信じたくない、こんなこと。
しかし、現実から逃れられない。
俺は、かなり重く大きい罪の十字架を背負う羽目になってしまった。


その時横から弓矢が飛んできた。
女はそれに気づき、
すかさず避ける。
が、来ていたパーカーが破けた。
視線の先には、オミがアーチェリーを構えている姿があった。

「や、やめろオミ!!」

俺の声は届かなかった。
彼自信もわかっているだろう。
こうなってしまうことに。
そして弓矢がまた放たれたときに、
俺はハルだと思う女をかばった。

「っ!?」
「ぐあぁぁっ!!」

弓矢は俺の背中に深い傷を着けた。
刺さったわけでもなく、かすれたのだ。
ただ、あまりの痛みに悲鳴をあげた。
背中の痛みだけではない、
心の傷の痛みも感じたのだ。

「っ...オミ...コイツだけは見逃してくれ。」
《えっ!?何でそんなことに!?
...わかった。僕も一旦退くね。》
「すまない...。
お前も逃げろ...死にたくねえだろ...。」

俺だって死にたくない。
でも大事なものをまたなくすより、
コイツに殺られたって構わない。
俺は...死んでもいい。

「ユウト!」
「ア...ヤ...。」

...気が遠くなってきた。
だんだんと力が抜けていく。
痛みも少しずつ感じなくなっていく。
俺はその場に倒れこみ、気を失った。



...その時最後に見たのは、
女の...ハルの泣き顔だった。
____________


...目を覚ますと、トレーラーの中にいた。
起き上がろうとするが、
背中の痛みがジンジンと感じる。
頭痛も酷く、なかなか起き上がれない。
と、自分が座席で仰向けになってるのに気づく。

「ユウト、大丈夫?」
「...っ。すまない、俺、かばったりなんか...。」
「...わかるよ、お前の気持ち。」
「えっ...?」

その後ヨージから過去の話を聞いた。
愛していた恋人の明日香がミッションのターゲットだったこと。
そんな彼女を愛していたのに殺してしまったこと。
後悔とか、悲しみとか、そんなことを話してくれた。


その時窓から誰かが覗いていたことに気づく。
あの影は...多分ハルかもしれない。
俺達の話を聞いていたのだろう。


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作者名:神楽小夜・コハル | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年1月14日 12時

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