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「ここにいるのはマズいだろうし、場所を変えよう。…立てるかい?」
「無理。私、アルフレッドと違ってこういうのすぐ酔うから…う」
話している間にも揺れはどんどん強くなっていく。崩壊まであと僅か、といったところか。所々天井も崩落し始めている。
これ以上はマズいと判断したらしいアルフレッドは、私を背負うとそのままゆっくりと歩き出した。
「……とはいえ、安全な場所なんて全く思いつかないんだぞ。Aはどこか思いつくところがあるかい?」
「ないかな。強いていうなら、校庭に出るのが一番だとは思うんだけど…」
「窓から出るってのは無理そうだな! そもそもガラス片が邪魔になるし」
「じゃあ昇降口からはどう?」
「イイね! よし、それで行こうじゃないか!」
アルフレッドに背負われているからか、酔いが少しマシになった。相変わらず振動が凄いが、落ち着いて状況を把握できるようになったのはアルフレッドのお蔭か。
…確かに、彼はヒーローらしい。思わずくすりと笑ってしまった。
「なんで笑ったんだい今!?」
「え? ああ、別に。ただやっぱりアルフレッドはヒーローなんだなって」
そんな私の言葉に、アルフレッドは暫く沈黙した。アルフレッド? と呼びかけると「A」と名前を呼び返される。何と訊ねれば私を背負うヒーローは「そんなの当たり前じゃないか!」と声をあげて笑った。
…いつものアルフレッドに、ホッとした。
「なんだい、今更気付いたのかい? 俺がヒーローだって」
「うん今更。本当にヒーローだったんだ、アルフレッド」
「……当たり前じゃないか」
照れているのか、アルフレッドの耳は真っ赤だった。私がアルフレッドを褒める事自体が珍しい事だという事もあるが、ともかくアルフレッドは嬉しかったんだろう。
彼は誰よりもヒーローで、それでいて誰よりもヒーローとしての自分を認められたがっていたようだから。
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作者名:木星人 | 作成日時:2017年6月25日 13時