久遠くんの本音 ページ8
翌日、1人で朝食をとっているであろう彼を探す。案の定1番端の机の隅で黙々と食べていた。
『ここ座っていい?』
「…勝手にしろ」
『はーい、どうも』
本当に座るとは思わなかったのか軽く睨まれる。
そんなに警戒しなくても…
「なんでここに来たんだよ」
『いや〜、昨日の試合について聞きたくてね。なんであんなことしたの?』
これ以上刺激しないように優しく諭すように問いかけるが彼は眉を顰め口を割ってくれない。
『…このことを報告書にまとめたくて貴方に直接聞いているの。裏切り自体を悪く言いたいわけじゃなくて、君にそこまでさせた何かがあるのかなって思って。
カウンセリングも兼ねて聞きたいんだけど、ダメかな?』
先日の蜂楽くんを真似て上目遣い気味に彼を見つめる。少し揺らいだな、と思えるくらいに肩がピクついた。
ジッと目線を合わせていると観念したのかため息を一つ。
「こんな所で事情聴取もどうかと思うけど…俺と部員のサッカーの意識の違いだよ」
『おお、まさか答えてくれるとは…てことはここに来る前に少しいざこざった感じ?』
いざこざったって…と不満を持ちつつも簡潔に説明してくれる久遠くん。
なるほど、熱意か〜。
『でも彼らとチームZのみんなは違うでしょ?確かに最下位チームだけど一戦勝ててる訳だs「1人で勝つって決めたんだよ!」…そっか』
少し熱くなったのか立ち上がって私を見下ろし叫ぶ。
そりゃ私なんかに言われたくないよね。
食堂にいる選手に一斉にこちらを向かれたので彼を宥め一旦座らせた。寮生活の殺し合いの惨さを改めて実感できる。
これからどうするか聞いても裏切り者が話すかと答えてくれない。私一応監視員なんだけど…
『1人で戦おうとしてるだけでも偉いよ。君は理解されない苦しみをわかってる…
最後まで信じられなかったのは残念だけどここの生活が選手を追い込むことはこれで証明できたしね』
生き残る戦術としてはありだろうよ、と彼の髪を撫でて席を立った。
振り払われるかと思ったが案外受け入れてくれる。1人は心細いよな…
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ミニマリスト(プロフ) - あかさん» ありがとうございます! (2023年4月6日 23時) (レス) id: c8acddd057 (このIDを非表示/違反報告)
あか - 面白い (2023年4月4日 19時) (レス) id: ddb39cbf35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミニマリスト | 作成日時:2023年3月8日 17時