不確かなそれを(青) ページ41
.
『丈くん、わたし海見たい。』
撮影終わり、Aがふとそんなことを言い出す。窓から見える外の色は、もうすっかりと薄暗い。
突然の提案に、明日のスケジュールを脳内へ咄嗟に浮かべて考える俺は、相当こいつに甘いんやろうなと改めて自覚する。
幸い明日は2人とも昼からの仕事で、時間にはたっぷり余裕がある。ほんなら行こか、とポケットの中の鍵を取り出しては、駐車場に停めていた車へふたりで乗り込んだ。
明日のスケジュールが昼からなことも、最近俺が車で仕事場に来ることも、全部Aに把握された上でのわがままなんやろうけど。それでもできる限りのことは叶えてやりたい。純粋にそう思うのは、Aが毎日必死になって頑張ってるのをちゃんと知ってるから。息抜きぐらいは付き合ってやりたい。
いつもとは反対の方面へ向かう道、少し開けた助手席の窓から入り込む風が、Aの髪をさらさらと揺らす。シャンプーの甘い匂いがして、女の子やなあと思った。今更当たり前なんやけども。
恋愛的に好きやとか、付き合いたいとかそういう気持ちがあるわけやない。単純に、なんかこう。存在自体を愛おしく感じる。大事にしたい、と心の底から思える相手。歳をとって、いつか互いに表舞台から姿を消したとしても。大切に思う気持ちは、ずっと変わらんままやと、そう思う。
『日沈んだらだいぶ涼しいなあ。』
「昼間が暑すぎんねん。」
『確かに。今年やばいよなあ、毎年言うてるけど。』
来年もおんなじ事言うんやろな、とAは隣で笑う。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フウキ - リクエスト失礼します！恭平くんで推しとオタクの恋みたいなのが見てみたいです！よかったらお願いします！ (2022年8月5日 8時) (
レス) id: df4d6de387 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらぐ(プロフ) - このさん» コメントとリクエストありがとうございます。お応えできるように頑張ってみます^-^これからも応援よろしくお願いします！ (2022年8月3日 23時) (レス) id: bdaa3871aa (このIDを非表示/違反報告)
この(プロフ) - お気に入り100人おめでとうございます！！道枝くんのことがずっと好きな幼馴染のお話お願いしたいです(>_<) (2022年8月3日 22時) (レス) id: b1b26418ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらぐ | 作成日時：2022年7月22日 22時
