月ノ姫＿LIP×LIP＿【染谷勇次郎】 (ページ9)

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月ノ姫＿9【染谷勇次郎side】ページ9

たまたま月の国の王様に呼ばれて僕はこの国に足を運んだ。

王様に会い、用が済んだことで僕は僕の住む国に帰ろうと足を進めていた。

すると何処からかすすり泣く声が聞こえた。

(…誰か泣いている？)

そう思った時には僕の足は既に鳴き声のする方へと方向を変えていた。

(ここだ…。この壁の向こう側から鳴き声がする)

僕は迷わず壁の上へとあがる。

そこには広い庭の真ん中に1人座り込んで泣きしくる小さくか弱い1人のお姫様がいた。

僕の声に顔を上げた彼女は星のように輝く金の瞳いっぱいに涙を溜めていた。

涙を堪えようとしているのか、眉間に皺を寄せていたけれど彼女の瞳から溢れる涙は止まりそうになかった。

思わず庭におりて涙を拭うと彼女が外の世界を知らないと言うものだから驚いた。

彼女はこの高い壁に囲まれた部屋で今まで過ごしてきたのだろうか。

何も知ることが出来ずに、一人寂しく。

最初は何も知らないと言う小さくて憐れで可愛らしいお姫様に興味が湧いただけだった。

そんな彼女に外の世界を話しているうちにコロコロと表情を変える彼女にいつの間にか惹かれていた。