月ノ姫＿12 ページ12
彼が去ってから5年の月日が経った。
その間私は毎晩彼と会っていた庭で彼が来るんじゃないかと待っていた。
待っては来ないことに落ち込んで、泣いていた。
お父様には彼が去った後、ここに誰か来ていなかったと問い詰められたが、私は必死に彼との思い出を隠した。
お父様はそんな私に深く追求してこなかった。
(…今日も来ないのだろうか。待ってる、待ってるよ。)
名前も知らない、青い髪に青い瞳の彼。
何も知らないと言った私に外の世界を教えてくれた彼。
私の…初恋の彼。
彼が去ってから私の元に数件の縁談が届いていた。
一国のお姫様なんだから当たり前なんだろう。
それでも私は、何度も何度も断った。
彼が来ると信じて。
彼の事が忘れられないから。
(会いたいなぁ…)
じわっと目に涙が溜まる。
堪えようとしていても、彼の事を思い出すとどうしても溢れ出てくる。
ーーコツ、コツ。
不意に壁の外から階段を登る足音がした。
「＿泣いているの？ねえ、お姫様」
あの夜と同じ壁の上から
あの夜と同じ優しい声がした。
彼が庭に足を着くと同時に彼に抱きつく。
「うぅっ…っ、ひっく、っ…」
離れることのないようギュッと彼を抱きしめると彼も優しく抱き締め返してくれる。
「遅くなってごめんね。」
「君に伝えたいことがあるんだ」
そう言い私を見つめる彼の目は離れた人同じように真剣で、でもどこか熱を帯びていた。
「＿好きだよ、お姫様」
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作者名：M00N | 作成日時：2021年12月13日 2時
