another #9 ページ15
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もうすぐ退勤という時間に、デスクの上のスマホが細かく振動した。
画面を確認すると、新着メールが1件。
>ごめん、今日遅くなる。ご飯もいりません。
たったの一行、淳太くんからだった。
お仕事かな。そりゃ財閥会長の孫で、何でもこなせる淳太くんが任される仕事は多いし何より責任もあるし。
その上での付き合いもある、とは思う。
分かってる、分かってるんだけど。
『……はぁ、』
寂しい。
家に帰ったら淳太くんが待ってると思って仕事頑張ったのにな。
「ため息ついてたら幸せ逃げんで〜」
その声にハッと顔を上げると、
『流星くん!と小瀧くん』
長身でスラリとした、まるでモデルのような二人。
並ぶと様になるな…。
「おい声かけたの俺やんけ!なんで流星が先やねん!俺ついでみたいやんか!一応出張帰りやぞいたわらんかい!」
なんて騒ぐ小瀧くんは置いとこう。
「まだ気にしてんの?」
『いや、そうじゃないんだけど…』
流星くんが言うのは、おそらく昼間のこと。
それはちゃんと淳太くんにも謝るつもりでいる、けど。
『淳太くん、今日も帰り遅いんだって』
落胆する気持ちは、やっぱり隠せない。
「そっか」
「じゃあさ、俺らで飯行かへん!?」
ただ一人テンションの高い小瀧くんがそう言うと、流星くんはすかさず「どう?よかったらやけど」と気を遣ってくれた。
『…うん、行く』
きっとこのまま帰っても、ひとりで余計に寂しくなるだけだ。
ここは二人の優しさに甘えさせてもらおう。
「よっしゃ!じゃあ俺マッハで報告書あげてくるわー!」
ダダダッ、とオフィスを出ていった小瀧くん。
相変わらず落ち着きがない。
「ほんまにええの?帰らんくて」
『いいのいいの。淳太くんご飯いらないらしいし』
流星くんが心配そうに私を見つめているけど、気付かない振りをして目をそらす。
笑顔を貼り付けて、無理矢理気持ちを押し込めた。
「…じゃあ俺も支度してくる。ロビー集合な。望にも言っとくわ」
『うん、』
流星くんの背中を見送って、もう一度携帯に視線を落とす。
ホームボタンを押すと、さっき開いたままのメールの画面が表示された。
>分かった。気を付けてね
それだけを打ち込んで、送信ボタンを押し、
パタッと、手帳型のスマホのケースを閉じた。
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きしぽん(プロフ) - 可愛いカミ様さん» ありがとうございます!!励みになります!^^ (2017年8月24日 14時) (レス) id: a1a531b37a (このIDを非表示/違反報告)
可愛いカミ様 - 最高ですっ!これからも応援しています。無理せず頑張ってください。 (2017年8月22日 15時) (レス) id: d90d4201fa (このIDを非表示/違反報告)
きしぽん(プロフ) - 光葉さん» ありがとうございます!流星くんのはちょっと重ためのお話になってしまったんですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!! (2017年4月27日 1時) (レス) id: a1a531b37a (このIDを非表示/違反報告)
光葉(プロフ) - another story 感動しました。メインストーリーからの成長がわかり、凄く心に響きました (2017年4月26日 20時) (レス) id: 87b8702e28 (このIDを非表示/違反報告)
きしぽん(プロフ) - むーさん» わぁぁぁありがとうございます!( ;∀;) そう言っていただけてすごく嬉しいです!!更新遅めですが楽しんでいただけるように頑張ります! (2017年4月18日 10時) (レス) id: a1a531b37a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もも | 作成日時:2016年10月30日 18時