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「ねね、Aちゃん」
『なに?』
もうすぐ退勤という時、小瀧くんがイスごとキャスターで移動してきた。
「今日、中間帰ってくるんやろ?」
まったく、小瀧くんの情報網は侮れない。
『今日だけだよ。向こうでの仕事が一段落ついたから、帰ってきてくれるの』
「でも、楽しみやんな?」
『…そりゃ、まぁ』
「うはー!かわいいー!」なんて悶える小瀧くんはスルーして、デスクに散らばった資料をまとめていると、
「あ、この花、なんて名前やっけ」
私の背後からぐっと手を伸ばした小瀧くん。
『ちょっと近、』
デスクの隅に置いてあった小さい花瓶から、一本手に取ってまじまじとその花を見ている。
「ほんま変わった形してるよなぁ。なんやっけ、せんにち、べに?」
『せんにちこうね』
「あ、それやそれや」
あの日から、デスクにも千日紅を飾ってる。
淳太さんが、傍にいてくれる気がして。
「まぁでもよかった。Aちゃん元気そうやし」
『え?』
「ううん、なんでも」
小瀧くんは指で茎をくるくる回していた千日紅を花瓶に戻して、
わざとらしくニヤッと笑うと、
「これから流星と飯なんやけど、来る?」
『残念。私これから彼氏に会うから』
「ははっ、せやな!」
ポンッと私の肩を叩いて、小瀧くんは立ち上がった。
『あっ、お疲れ様』
「ん。中間にもよろしく言っといて」
小瀧くんの背中を見送って、私も鞄に荷物を片付けていると、
ピコン、とメールの着信を知らせる音がなった。
>会社の入口にいます。
その一行だけで、心臓の鼓動が速まって、どうしようもなく頬が緩む。
無意識に早歩きになって、どんどん下がるエレベーターの階数を見つめて、早く1階に着かないかなって、ドキドキして、
早く顔が見たくて、声が聞きたくて、
早く、抱きしめて欲しい。
ロビーの社員口を抜けると、自動ドアの向こうに黒いスーツ姿の人影が見えた。
『________淳太さんっ』
ヒールなのも忘れて、駆け出した。
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きしぽん(プロフ) - 可愛いカミ様さん» ありがとうございます!!励みになります!^^ (2017年8月24日 14時) (レス) id: a1a531b37a (このIDを非表示/違反報告)
可愛いカミ様 - 最高ですっ!これからも応援しています。無理せず頑張ってください。 (2017年8月22日 15時) (レス) id: d90d4201fa (このIDを非表示/違反報告)
きしぽん(プロフ) - 光葉さん» ありがとうございます!流星くんのはちょっと重ためのお話になってしまったんですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!! (2017年4月27日 1時) (レス) id: a1a531b37a (このIDを非表示/違反報告)
光葉(プロフ) - another story 感動しました。メインストーリーからの成長がわかり、凄く心に響きました (2017年4月26日 20時) (レス) id: 87b8702e28 (このIDを非表示/違反報告)
きしぽん(プロフ) - むーさん» わぁぁぁありがとうございます!( ;∀;) そう言っていただけてすごく嬉しいです!!更新遅めですが楽しんでいただけるように頑張ります! (2017年4月18日 10時) (レス) id: a1a531b37a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もも | 作成日時:2016年10月30日 18時