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自分の無力さに引けを感じながらもついていくことにした。十夜と礼仁をふたりきりに出来たのは大きい。実際の兄弟ではないにしろ、十夜が安心できればそれでいい。
3人は足並み揃えて歩き出した。少しするとまた左右に扉がある。右手の扉に鍵を差し込む。鍵が合わず、つっかえてしまう。左手の扉にも鍵を入れる。またつっかえてしまう。
3人は揃ってため息をついた。また歩き出す。左手に扉が見えると蘭がうきうきして近付く。鍵を差し込む。紫色のリボンが優しく揺れる。鍵はスッと入っていった。カチャカチャと回すと、鍵が開く。智樹が唾を飲む込む音が微かに聞こえ、昌の漏れる息が耳を占める。蘭がドアノブに手をかける。すると扉がゆっくりと開いた。
足を進める。この部屋に入るなり、重たい空気が肌にまとわりつく。なにかに圧迫されているような感じだ。蘭、智樹、昌の順で横並びになる。3人は部屋全体を見回す。左右に広がる室内。中央には客人用か、ソファが向かい合う中に長方形のミニテーブルがある。右奥の壁には黒いコートがかけられていて、その周辺にはいくつか紙が画鋲で留めてある。そして左奥。気づくとそこには少年がいた。蘭の眼光に勝るとも劣らない鋭い目つき。キラッと何かが光るとその場の空気が具現化したように紫色の煙が部屋中立ち込めた。
「な、なんだ!?」
「動けねっ、重い...」
智樹の一言で昌が呟いた。空気が先程よりも重たい。何かで縛られているような感覚だ。それもそのはず、3人の身体を何かが縛り上げていた。
「くっ...これでは太刀打ちできない」
「どうすんだよ!!」
智樹は黙りこんで二人のやり取りを聞く。なにかこの状況を打開できる策はないか。必死に頭を回転させる。
「昌、お前の力は使えないか...!?」
「は?あえっと、ものを自在に動かすやつ!?」
目玉がないので、異形化できないだけであり、ものを動かすことは出来るのではないかと考えた。しかし、縛られている何かを動かすことは出来なかった。
「それは縛りの呪い。他の力は効かない」
口を開いたのは目つきの悪い少年だった。少年がこちらに近づいてくる。すると蘭の首に、縛り上げていた何かが移動し、段々と縛りの強さが上がっていく。苦しそうに踠く蘭。喘いで首元に手をやるがどうにも離れない。死ぬ、蘭はそう悟り一瞬体の力が抜けるのがわかった。智樹に会ってからだいぶ経つ。今までのことは全て夢だった。そんなふうに思えてくる。近づいてくる少年の殺気にひれ伏ふす。
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ハンス(プロフ) - 錯乱懋さん» この度は当作品を閲覧いただき、また、激励の言葉をありがとうございます...!!その言葉が創作の糧になります!!これからもよろしくお願いします。 (2017年8月3日 23時) (レス) id: c8c85e524e (このIDを非表示/違反報告)
錯乱懋(プロフ) - 世界観ものすごく好みです、更新頑張ってください (2017年8月3日 23時) (レス) id: 61413b54f8 (このIDを非表示/違反報告)
ハンス(プロフ) - 瑞絋さん» 暇を持て余した愚作にございます...誤字脱字ないようきちんと推敲いたします。日々精進していけるよう努めて行きたいと思います。これからもどうかよろしくお願い致します!!!! (2017年3月20日 16時) (レス) id: 53232f222d (このIDを非表示/違反報告)
瑞絋(プロフ) - ハンスさん» 一日にこんなに沢山かけるの凄いと思います、沢山書いてると誤字は必ず出てきますし仕方ないですよ!これからも頑張ってください、応援してます! (2017年3月20日 16時) (レス) id: 6e54a0adb9 (このIDを非表示/違反報告)
ハンス(プロフ) - 瑞絋さん» 参加させていただきました。ハンスト申しますハンスと申します。ご一読、ご指摘いただき誠にありがとうございます。誤字!!大変申し訳ありません。私の確認不足です。修正しておきます。 (2017年3月20日 16時) (レス) id: c8c85e524e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハンス | 作成日時:2017年3月18日 18時