#25 ページ28
謝罪の言葉を促すだけで、誘導はしない。自分から誤りに行く姿が見たかった。
蘭はもじもじとうなじで結んだ黒い髪を触り、ちらちらやっていた。昌は意気消沈して心ここにあらずという感じだ。
もう謝らなくてもいいじゃんと蘭は思っていたが、智樹からの目が気になってそういうことにもいかなかった。智樹に宥められてバツが悪そうにしてして拗ねて、いつもは気取った自分なのに情けない。
蘭はスタスタと顔色を変えずに昌に近づく。十夜が昌を揺すってみせると、蘭は少し安心した。昌が目を開けて抱かれていたことに多少驚くと、近づく蘭に気づいた。二人の目がぱっちりと合う。蘭が足を止めた。昌は何が始まるのだろうとそわそわ不思議そうに蘭を見つめる。
その顔にさえ苛立ちを覚える自分がいやだ。吹っ切れなくてはならない、この腹の立つ甘ったれた顔が嫌いだ。この顔にこの性格に謝らなくてはならない。プライドが許さない、だけれど謝らないとメンツが立たない。
「ごめんなさい」
どうしても頭は下げたくない。気に入らない奴だ。十夜があまりにも付き合いやすかったのか、自分がこいつと付き合えないだけなのか。
そうこう考えているうちに自然と体が動いて上半身は45度に曲がり、口からはごめんなさいとこぼれた。
「あ...うん」
昌は目を半分細めた。口元につけたピアスがゆらゆら光っている。腐ったような目をしていたと思っていたが、存外、煌めく瞳なのかもしれない。
謝りたくないというのは建前だったかもしれない。蘭がそう考えれば考えるほど下げた頭が重たく感じられた。顔を上げた。自分の顔はどうなっているだろうか。少年蘭はぐちゃぐちゃに顔を歪め目尻に涙を貯めていた。
ゆれる温かい液体越しに見える昌の顔がよく見えなくなった。でもだけどこちらを見ている。笑っている?バカにしている?わからないけれどそれでよかった。何も見えなくて安心した。
「らんらん、蘭くん」
「...なに」
「なんでもない...。...顔、濡れてるよ」
「別にいい」
珍しく子どもにかえった蘭は拗ねてないといったら嘘になるが、素直になったといえばそうだ。智樹が温かくそれを見守っていると、服が引っ張られるのがわかった。
感触の方に目をやると、いつのまにか蘭がいた。ずびずびと流れる諸々をシャツの裾で拭っている。見えるつむじがなんとも愛おしく、頭を包み込んで撫でた。
蘭の口からは「ひぐ」と小さな呻きが漏れていた。
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ハンス(プロフ) - 錯乱懋さん» この度は当作品を閲覧いただき、また、激励の言葉をありがとうございます...!!その言葉が創作の糧になります!!これからもよろしくお願いします。 (2017年8月3日 23時) (
レス) id: c8c85e524e (このIDを非表示/違反報告)
錯乱懋(プロフ) - 世界観ものすごく好みです、更新頑張ってください (2017年8月3日 23時) (レス) id: 61413b54f8 (このIDを非表示/違反報告)
ハンス(プロフ) - 瑞絋さん» 暇を持て余した愚作にございます...誤字脱字ないようきちんと推敲いたします。日々精進していけるよう努めて行きたいと思います。これからもどうかよろしくお願い致します!!!! (2017年3月20日 16時) (レス) id: 53232f222d (このIDを非表示/違反報告)
瑞絋(プロフ) - ハンスさん» 一日にこんなに沢山かけるの凄いと思います、沢山書いてると誤字は必ず出てきますし仕方ないですよ！これからも頑張ってください、応援してます！ (2017年3月20日 16時) (レス) id: 6e54a0adb9 (このIDを非表示/違反報告)
ハンス(プロフ) - 瑞絋さん» 参加させていただきました。ハンスト申しますハンスと申します。ご一読、ご指摘いただき誠にありがとうございます。誤字!!大変申し訳ありません。私の確認不足です。修正しておきます。 (2017年3月20日 16時) (レス) id: c8c85e524e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハンス | 作成日時：2017年3月18日 18時
