#24 ページ27
非情な奴め。そこにいた誰しもが思った。当の本人、蘭さえもそう思った。他人事のように叫び声にかき消される自分の声を聞いていた。ある日のページを音読する。字が汚いこともあり半ば途切れ途切れの音読であるが、理解できない訳では無い。
「あああああああああああああああああ」
「ああやめろやめろ、読んでやるな蘭。お前は人を殺すような残酷な野郎だが、少年を救いたいという美しい信念を持った少年だ。わかるな」
叫び声に負けないように精一杯智樹言う。蘭を宥めるために出た言葉だが、蘭自体がこれをどう思うのかなんて考えなかった。
蘭は微かに聞こえる智樹の声に耳を傾け少し嬉しくなって声を落とした。しばし固まったまま先ほどの言葉が頭の中でエコーするのを聞いていた。
ノートをパタンと閉じると昌の叫び声も途端に消え、一瞬の沈黙ができた。
「すいませんね。私の中の悪魔が」
多少子どもじみた文言で、沈黙は破られた。
蘭はすました顔をしているが、昌はしくしくと悔しそうなこの世の終わりのような。絶望をあらわにして項垂れていた。
「いい、よもうあぎ、らめた」
「え、ま、声大丈夫...」
蘭の言葉に返す声が聞こえたので、誰かと思えば昌だった。その声はガサッガサの低重音で途切れ途切れであった。おじさんの咳払いに母音と子音を頑張って付けたような感じでもあった。その声の持ち主が昌だと知った十夜は瞬時に顔色をかえ、半ば引いたような顔から、心配する優しさがにじむ顔へと変わっていった。
昌が咳払いするたび背中をさすった。
すると1人呆然としていた智樹が立ち上がり、蘭に近づいていった。
「人が嫌がることは?」
「進んでやる」
「...しちゃダメだ」
拗ねた。ただひたすらに拗ねている。自分が悪いことは重々承知しているのだ。しかし、今から叱られると思うとそれがどうにも嫌で、放って置いてほしいのに話しかけてくるから反抗したくなる。一度反抗するともうあとには引けない。反抗したことに対して、人の嫌がることをやったことに対して。長々と説教が始まる。嫌だ。
「仲良くしろとは言わないけど、謝らないといけないぞ」
と思っていたら、智樹は説教もいよいよフィナーレというような言葉をかけてきた。
この蘭という少年も、そう、少年なのだ。智樹は分かっているつもりだ。子ども心がどんなものなのかを。わかっていることを何回も言われることが嫌、怒られて反抗してまた怒られる悪循環はもっと嫌。だからこそこの言葉をかけた。
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ハンス(プロフ) - 錯乱懋さん» この度は当作品を閲覧いただき、また、激励の言葉をありがとうございます...!!その言葉が創作の糧になります!!これからもよろしくお願いします。 (2017年8月3日 23時) (
レス) id: c8c85e524e (このIDを非表示/違反報告)
錯乱懋(プロフ) - 世界観ものすごく好みです、更新頑張ってください (2017年8月3日 23時) (レス) id: 61413b54f8 (このIDを非表示/違反報告)
ハンス(プロフ) - 瑞絋さん» 暇を持て余した愚作にございます...誤字脱字ないようきちんと推敲いたします。日々精進していけるよう努めて行きたいと思います。これからもどうかよろしくお願い致します!!!! (2017年3月20日 16時) (レス) id: 53232f222d (このIDを非表示/違反報告)
瑞絋(プロフ) - ハンスさん» 一日にこんなに沢山かけるの凄いと思います、沢山書いてると誤字は必ず出てきますし仕方ないですよ！これからも頑張ってください、応援してます！ (2017年3月20日 16時) (レス) id: 6e54a0adb9 (このIDを非表示/違反報告)
ハンス(プロフ) - 瑞絋さん» 参加させていただきました。ハンスト申しますハンスと申します。ご一読、ご指摘いただき誠にありがとうございます。誤字!!大変申し訳ありません。私の確認不足です。修正しておきます。 (2017年3月20日 16時) (レス) id: c8c85e524e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハンス | 作成日時：2017年3月18日 18時
