カフェラテとカプチーノ

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なんというか、至極困っている



ブランチの時間の例のカフェ

この前とは別の、奥のボックス席

向かい合う目の前には若い男子

よく分からないがここまでは良しとする



問題はここからで



相変わらず古着のような独特の服を着て

パーマと寝癖が紙一重のようなふわふわの頭をして

何食わぬ顔でクロックマダムを頬張るこの人は

恐らく職業柄、こんな呑気にこんな女を同じ卓に座らせて

優雅にブランチをするのは如何なものだろうかと




『僕全然気づかれないですよ、いつもこんなんです』




なんて、本人は何ら気にしていない風なんだけど

私の方がそわそわして仕方ない





『本当にケーキはいいんですか？』

「十分です、コーヒー大好きですし」

『そうですか、ならいいですけど』

「すみませんわざわざ、ありがとうございます」

『いえ、やっとお礼が果たせてよかったです』




松村さんは満足そうだけど

こちらとしてはやっぱり居た堪れない



一方でパンから垂れる半熟卵と格闘している松村さんは

昨日の現場でのクールな感じとは全然違う、ほぼ普通の人の感じ







『でも、Aさんの勘が良くて助かりました』

「いや、それはまぁ」

『だって俺今日場合によっては

　一日中ここで待ち惚けも全然覚悟してましたし』



だから俺三冊くらい本持ってきました、なんて



たしかに、我ながらよくここを連想したとは思っている

『明日オフです』とだけ書かれたメッセージに

最初こそ目が点にはなったけど




「なんとなく、話の流れからそうかなぁって思ったので」

『うわーさすがだ。あ、でも今日お仕事は、』




世の中は火曜日ですよね？って




「まぁ…フレックスで、これから出社しますけど」

『え…これからですか』





今までの和やかだった松村さんの表情がさっとなくなって

さらには格闘に敗れ半熟卵がぼとっとお皿に落ちる




「っていうのは冗談で、今日は有給消化です」

『っ、へ？』

「昨日の撮影で仕事がひと段落したので」

『…そうですか、』




あー焦ったぁ、なんて言いながらお冷やを飲み干して

おでこに手を当てて気を落ち着かせているらしい




『俺今、昨日ヤバいことしちゃったかもって思って』

「ふふ、普通に結構やばかったですよ？」

『…ですよね、』




すっかり食べかけのパンをお皿に置いて

うわぁと頭を抱える松村さんは、何だか見ていて面白い


あと、本当は俺って言うんだなぁ、なんて

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