カフェラテとカプチーノ

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小さな二人掛けのダイニングの向かい側

大きな口でオムライスを頬張るのはまるで食べ盛りの少年




『…うわぁ、うま、』

「大袈裟ですよ、ただのオムライスです」

『んなことないですって。だって卵とろとろだし』





なんだかずっと変な感じだ

長らくひとりこの部屋で誰かと食卓を囲むなんて

しかも相手はアイドルだなんて、考えるほどに不思議





『Aさん？食べないんですか』

「あ、食べます」




松村さんは無邪気に美味しい美味しいと言って頬張るけど


口に入れなくても分かるそれはやっぱりいつもの味





『っていうか、松村手料理ダメそうでした？」

「いや、そうじゃないんですけど、ほら、」

『…あれだ、職業的にとかそいう？』

「まぁ、」

『なるほど』





あからさまに曇り出す表情

さっきまで合っていた視線が外される

今から私は何を言われるんだろう

首筋に変な汗を感じる






『まぁなんて言うか、
　僕こんな仕事してますけど、普通の人間なんですよ、所詮は』


『だから基本的に何食べたって、何処で何したって俺の自由で』


『仕事に影響するかしないかはまずは俺の責任で』


『Aさんがどうしたからあなたの所為、なんてことはないんです』





いつの間にからになったお皿に目を落としながら

いつもより少し低い声でゆっくりと話す松村さんは

どこか物悲しいようなそんな表情





『すみません、一気に喋り過ぎました』

「そんな。寧ろ私の方こそ、勝手に線を引いてたみたいで」




こう言う時、どうやって空気を戻せばいいんだろう

今まで言い合いをするほどの友だち関係とか築いたことないし





『やっぱ線引いてたんだ』

「あ、えっとそれは…はい、」

『はは、大丈夫です、慣れてます。
　とはいえ急にガツガツ来るとかも俺無理だし』




それには共感、だけど

経験上自分がそうだからって相手に気を使い過ぎて面倒な人だと思われてばっかり

やっぱり友だち、いや人付き合いって上手くいかなくて苦手

今日だってお詫びに手料理なんてまさに急にガツガツ案件じゃん






『だからね、俺多分、Aさんとは友だちになれそうな気がするんです』

「そうですよねぇ、こんな奴無理ですよね…え？」





スプーンの上のオムライスがぼとっと鈍い音を立てて器に落ちて

それと松村さんとを目がぐるぐるするくらいに交互に見遣った

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