カフェラテとカプチーノ

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踏切を超えてからの道のりは

さっきまでのポツリポツリの会話すらなくなってしまった


まぁ、これ以上変なこと喋ったら…

なんてビビった私のせいだけど


松村さんも何度かこちらをちらちらと見る程度で

特に口を開くことはなくて

あぁ、もう完全に引かれた








「松村さん、私そろそろこの辺で」

『…ここですか？』




たまたま立ち止まったのが築何十年みたいなアパートの前で

松村さんは目を丸くして二度見




「いやぁ流石にここではないですけど、」

『あぁ、ですよね』

「でもほんと、もうすぐそこなのでここで大丈夫ですよ」

『…あの、Aさんて、

　他人に自分の家知られるの嫌な人ですか？」

「…はい？」




そんなことは思ったことないし

マンションはここから見えるすぐそこ

なんなら今私が思っていたのは

松村さんともあろう人が私なんかとマンションの前になんて

ってやつなんだけれども



いくらカフェでバレないからって、ねえ？





『おぉ、すーごい百面相』

「わ、すみません。

　そうじゃなくて、これ以上はその、松村さんにご迷惑が」

『あー、じゃあ、あとちょっとのこの距離で

　Aさんに何かあったらそれこそ迷惑、ですね』





これは理詰めというやつか？

ぐうの音も出ないとはまさにこのことなのか？





『今、小賢しいとか思いました？』

「いやそんなことは、」

『ってことなんで、今日のとことは送らせてください』

「あ、はい…お願いします」





諦めた私に心なしか嬉しそうな目をした松村さんと歩くこと数百メートル

あっという間にマンションの下まで来てしまった




そんなことはないとは言ったけれども

人に家を知られてこんなに緊張するのは初めてだ

この際松村さんが方向音痴だったらいいのにとか考えてるのに




『すみません、無理言ってついてきて』




なんでしゅんとするの

何も言えないじゃない




『Aさん、帰ったら読むんですよね、これ』

「へ？」



松村さんの視線の先は私の持つコンビニの袋、の中のあの雑誌で




『僕、っていうか僕ら？のこと知れるじゃないですか』




プロフィールなんかも書いてあるし

とかなんとか、ぼそぼそと





『だからなんか、イーブンじゃないなとか思っちゃって』


『俺も、Aさんのこと知りたいな、なんて』





向かい合ってへへ、と言いながらも視線が合わない松村さんを前に

心臓が変な音を立てた気がした

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