𝑚𝑒𝑚𝑜𝑟𝑦335 ページ36
***
そのまま目を閉じていると急に体が楽に、
解放されたように感じた。
「っ…？」
恐る恐る目を開けると、
今度は後ろから引っ張られた。
「きゃっ！！」
何かに思いっきりぶつかったと思って顔を上げた。
「千空！」
千「…よお」
後ろには彼が立っていた。
「千空…」
千「なんか嫌な予感すんなーって思って来てみりゃコレか」
司「ははっ。バレるの早かったなぁ」
彼の顔を見た瞬間ホッとした。
後ろから回された手に掴まり、
彼の首元に頭を擦り寄せた。
千「！…何かされたのか？」
「…」
司「大したことじゃないよ」
千「はぁ。テメーにゃ大した事じゃなくともコイツにとっちゃデケェ事かもしんねぇだろ。タダでさえトラウマ級のイヤーなイベントあったんだからよ」
司「！」
千「必要以上に近寄んな。コイツはテメーらがまともに相手出来る奴じゃねぇからな」
彼の声や言葉には重みがある。
真剣に伝えようとしてるのがすぐに分かった。
「千空…」
千「テメーも言われた事いい加減守れよ」
「っ…ごめん」
千「だからこんな目に遭うんだぞ」
「…」
目からポロポロ溢れ落ちる涙を彼は片手で拭ってくれる。
イバラとの事件以降、私はこういうのが本当に苦手になったんだと感じた。
千「つーわけだからコイツ貰ってくぞ。俺に用あんなら俺がテメーんとこ出向いてやっから」
司「そうか、分かったよ千空」
千「ン」
「っ！」
そう言うと彼は私を抱き上げて来た。
私も落ちないよう彼の首に手を回した。
そしてそのまま彼は司くんと別な方向へ歩き出した。
千「大丈夫か」
「うん…」
千「何かあったら呼べっつったろ」
「ごめんなさい」
千「やっぱテメーは1人にさせっとダメだな」
「…」
千「明日から作業終わったらすぐ俺んとこ来い」
「！…良いの？」
千「テメーもそっちのが安心すんだろ」
「…うん、行く！」
千「あぁ」
とことん心配してくれる彼の優しさ。
沼のようにどんどんハマっていく。
怖かったはずなのにいつの間にか気持ちが緩んで、
私はずっとニコニコしていた。
千「(司のやつ手ぇ出してくんの早過ぎだろ。…俺もそろそろ腹括んねぇといけねぇか)」
***
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Sちゃん | 作成日時：2023年9月3日 21時
