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𝑚𝑒𝑚𝑜𝑟𝑦320 ページ21

***







千「A!」

「っ!」



ホワイマン2号との交渉に失敗した私は、
悔しさのあまりその場に蹲って泣いていた。

そこへ息を荒げながら彼が走って帰って来た。



「…千空…っ」

千「お前、血だらけじゃねぇか!何があった!?」

「っ…」



泣いていた私を見た彼は慌てて私の傍に来てくれた。
所持品の中から綺麗な布を取り出し、
なんの躊躇もなく私の血を拭いてくれた。

その優しさにまた胸がギュッと痛くなって、
また私は泣き出してしまった。



千「痛ぇよな、悪ぃなすぐ来れなくて」

「!!」

千「とりあえずこれで鼻止血しっ…」



彼の言葉が全部胸に刺さった。
耐えられなくなった私は彼に抱き着いてしまった。



「千空…っ、千空…」

千「おいどうした。もしかしてホワイマン2号のせいか?」

「っ…」



頷くと彼は黙って私の頭を撫でてくれた。



千「あっちから絡んできたのか?」

「…ちが、う…」

千「まさか、テメーから絡んだのか?」

「…う、ん」

千「はぁ?何やってんだ!そんで返り討ちにあったんじゃ元も子もねぇだろうが」

「だっ、て…だって…!」

千「ンなもん…ホワイマン2号に頼んなくても俺が居んだろうがバカ女」

「っ!」

千「まぁでも裏を返せば、ホワイマン2号にしか頼めねぇような内容だったんだろ」

「…うん」

千「はぁ、それ俺のことか?」

「……うん」

千「…」



抱き締められながら彼にでっかいため息をつかれる。



「ごめん、なさい」

千「なんでテメーが謝ってんだよ意味わかんねぇだろ」

「だって…わたし…千空、の、こと…」



話そうとすればするほど涙が溢れてしまう。
そしてどんどん言葉に詰まっていく。



千「あーはいはい過呼吸なり始めてっからまず泣き止め。話は後でいい」

「んっ…」



私の呼吸を整えてくれるように彼は背中をたくさん摩ってくれたりトントンしてくれていた。
最終的には膝の上に乗せられて揺りかごみたいに揺らされていた。



千「大丈夫だ」

「…っ」



何度も何度も彼は大丈夫と言ってくれて、
その度に頭を撫でてくれた。



千「…鼻血はもう止まったか?」

「…うん」

千「そうか。もう少ししたら顔洗いに連れてってやる」

「…ごめん」

千「謝んな、なんも悪くねぇよ」

「…」



やっぱり私、彼が何よりも大切だ。







***

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作者名:Sちゃん | 作成日時:2023年9月3日 21時

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