33 彩side ページ34
2階辺りまで来た時女性の声が耳に飛び込んできた
「今の絶対KAITO王子だったわよ」
あ、誰かが高宮さんに気付いてる
私は興味を持って声の聞こえてくる方向に身を乗り出した
「ファンクラブに入っている私の目は誤魔化せない！」
声は階段に通じている廊下の奥から聞こえてくる
「あのスタイルの良さ、颯爽とした雰囲気、加えて体中から漂い出るあの爽やかさはKAITO王子以外に有り得ないっ！」
そっと歩み寄っていくと突き当たりに職員用給湯室と掲示されて部屋がありそのドアが開いていた
「またまたぁ！」
「佐竹館長はすぐそれなんだから」
さっきの声よりかなり若い女性達の笑いが響く
「クールボーイに入れ込みすぎなんですよ」
「もう40代に突入したんですから歳を考えて下さいね」
近寄って見れば給湯室の中には事務服を着た3人の女性が居た
2人は20代くらいで調理台に積み上げた綺麗なパッケージの箱を次々に開け中から出した個包装の小菓子をトレーに並べている
「これ、凄く美味しいんですよね、蒲郡の名物」
私もその包装紙に見覚えがあった
確かパパが出張のお土産に買ってきてくれたんだ
何処の出張だったの、って聞いたら愛知県の蒲郡だって
いいな、いいな食べたいな
「神立さん、よくこれ買ってきてくれますよね」
「実家が蒲郡だから、帰ってたんじゃないの」
そう言ったのは2人の隣には居た中年の女性だった
「次に帰った時もこれで良いからね、ってずっと前に言っといたのよ」
蓋を開けた魔法瓶の中にティーバッグを放り込みながら話す
「いろいろ気を遣わなくても、これで充分だからって」
若い2人は顔を見合わせた
「それって暗に請求してますよね」
「佐竹館長ってキツいなって思われますよ」
中年女性はそれがどうした、と言わんばかりの顔で魔法瓶の蓋を閉める
「さ、今日の分も出来たっと」
若い女性達は苦笑した
「佐竹館長、毎朝それやるの面倒じゃないですか。皆と同じ給茶機で済ませればいいのに」
「そうですよ。だいたいその魔法瓶は来館者が会議をする時なんかに使う為の物なんだし」
中年女性は平然とした顔で2人を見る
「一番端に置いてあるのをいつも遠慮がちに借りてるだけよ。それに私だって毎日この図書館に来てるんですからね。つまり来館してる訳よ、来館者でしょ」
若い2人は顔を見合わせた
「出た、強弁」
「オバさんのこじつけにしか聞こえないですよぉ？」
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作者名：驪乃 | 作成日時：2021年6月3日 21時
