2 彩side ページ3
その名前にちなんで、きっと燕のモニュメントなんだね。
「で、2羽の燕がこう嘴をくっ付けてる。通称、恋する燕。」
マリンは嘴の形にした左右の手をくっ付けて見せた。
私は燕がそうしてる様子を想像し、ニッコリ。
とても可愛く思えたから。
「その燕の間がハート形の空間になっててさ、それを通して向こうを見た時、そこに居た相手と運命の恋に落ちるらしい。」
げっ！…
「お前…なんで蒼ざめてんの？」
だって…向こうに居たのが既婚者のおじさんだったりしたら…すごく嫌だよ。
おばさんでも嫌だけど…犬とかだったらどうするの！？
「いや…道ならぬ恋に落ちたりしたら困るなって思って」
わたしがそう言うと、マリンは目を丸くした
「お前の考える事っていつも普通じゃないよな。流石文芸部。発想がユニークすぎ。」
え、そうかな…
「もっとロマンティックに考えたらどうよ」
う〜ん…そもそも私、恋愛にあまり興味が無いからなぁ…
想像がちっとも羽ばたかないんだ。
「それにさ、向こうに見えた相手なら誰でも、って訳じゃない。こっちがドキンとしないと運命の恋にならないんだ。」
あ、そうなの…
だったら間違わないよね…良かった
「私はさぁこういう計画を立ててんだよ。気になってる奴を誘って強引にそこまで連れてって向こうに立たせるだろ？そしたら此方から覗いてドキンとしてキメちまうんだよ。よくね？」
良くないでしょ
そういう行為は騙し討ちって呼ばれるものだからやめてね。
「でも私まだ行ったこと無くてさ。状況がよく分かんないんだ。取り敢えず今度、一緒に視察に行かね？」
視察だけなら良いよ。1度行ってみたいし。
「日曜でどう？良いよな」
マリンは何時も少し強引。
初めは気になったけど今はもう慣れた。
まぁ個性の1部かもって思ってるんだ。
「日曜の昼間は、私、秀明があるんだ。でもウィークデイより早く終わるから、その後なら大丈夫。」
そう言うとマリンは頷いた。
「じゃ、塾から帰ってきたら電話くれよ。」
オッケイ。
「お、見ろ、小谷だ。」
マリンの視線の方向に目を向ければ
ウチのクラスの小谷有沙さんが校舎のテラスから出てくるところだった。
庭を横切り、目の前を歩いていく。
ベンチに居る私達に気付かなかったみたいで
何も言わずにすうっと通っていった。
「音楽堂に行くんだ。小谷は合唱部だからな。」
マリンは以前、大きな女子グループのボスだった。
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作者名：驪乃 | 作成日時：2021年6月3日 21時
