浜田中の秀才くん【探偵チームkz】 (ページ20)

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19 彩side ページ20

「じゃ、バカ杉、お前だ」

上杉君はムッとしたように目を光らせながら、でも今度は先程の宣言を思い出したらしく若武を相手にせずに私達を見回した

「このところ、脳のシステムに興味を持っててさ。それに関する論文を読んでる」

あぁ、上杉君は前から病理とか心理学が好きだものね

「今、気になっているものの1つは睡眠。グリンパティックシステムっていう仮説があって、これは睡眠中に脳の老廃物が掃除されるっていう説」

へぇ！

「睡眠中に脳の整理が行われ最適化されるって説もあるんだ」

じゃ、眠らないと脳は劣化していくって事だよね

恐っ…気を付けよう、うん

「それから先月ロンドン大学が発表した扁桃体の活動。扁桃体っていうのは、脳のこのあたり2つあって、」

上杉君はテーブルに図を描き、その中央あたりの2ヶ所を指す

「感情と記憶に関する働きをしている神経細胞の集合体だ」

ふむ

「ロンドン大では人間を使って実験をして繰り返し嘘をつくと扁桃体の活動が低下していく事を確かめた。”嘘つきは泥棒の始まり”って言葉があるけど、その通りで小さな不正を重ねていく内に脳が罪の意識を感じなくなっていく過程が明らかになったんだ」

わぁ……諺(ことわざ)通りなんだ…

「脳はまだまだ未知の分野だからこれからも追っていくつもり、以上」

その言い方がまるで本物の科学者みたいに立派だったので私は心でパチパチと拍手をしながら同意を求めて皆を見回した

その時、翼の顔がいつもと違う事に気が付いたんだ

心で何かを思い詰めているような、密かに何かを決意しているような、でも何処か不安が混じっているような表情だった

翼は元々白い炎でさりげなく静かに燃えながら誰にも届かないような高い温度まで自分を引き上げていくタイプ

私は翼が現状に不満を持ち、イライラしていたことを思い出した

何か思い付いたんだろうか

でも、じゃあ不安は何？

何が不安なの？

「じゃ次、柊、行けるか？一応お前も此処に居るからさ」

柊さんも話すの？

『分かったよ』

いいんだ……笑

『僕が最近考えてる事なんだけどね？”正義”ってあるでしょ？』

うんうん

『でさその”正義”の反対ってなんなんだろうって』

”正義”の反対は”悪”じゃないの？

『殆ど皆が言うんだ。”正義の反対は悪だ”ってね。実際、立花もそう思ったみたいだしね』

だってそうじゃないの？

正義の反対は悪ってそういうイメージがあるもの