11 彩side ページ12
すると小塚君は出しゃばってごめん、と言わんばかりに目を伏せた。
私はちょっと若武を睨む。
そんなカッコつけるとこじゃないのよ、この威張りん坊
若武はそれに気付いたみたいだったけど、まるで無視して皆を見渡した
「ではkz会議を始める。今回は近況報告の会だ。」
翼がやっぱりね、とった風に私に目配せをする
その翼は何処と無くソワソワしている様に見えた。
多分柊クンが来るから、かな。翼、柊クンの事好きだもんね
「まず俺から。ホットニュースだぞ。サッカーチームkzは今度ユニフォームを一新する事になった。」
え、替えちゃうんだ…
シルバーのユニフォーム、カッコよかったのに
「今度のユニフォームは絶対勝てるヤツだ。ベースカラーは黒に近い紺色。そこに流星をイメージした銀色が、斜めに入る。」
小塚君が目を丸くした
「なんでそれで勝てるの？」
若武はニヤッと笑った。
「勝てるさ。この紺色は昔、戦いの際に鎧の下に着た着物の色と同じなんだ。」
へぇ
「あぁ、それなら正確にはカチ色って言うんだよ。」
そう言ったのは翼だった。
「同じ紺色でも、鉄紺とか紺青とかいろんな種類があって、鎧の下によく着た紺色ならカチ色。褐色の《褐》に《色》を付けて褐色って読むんだけど縁起を担いで勝色って言われてるんだ。10世紀後半に書かれた宇津保物語や、13世紀前半の平家物語なんかの戦闘シーンによく出てくる色だよ。」
すごい、詳しいっ！
感心したのは私だけじゃなかった
「美門すげぇ。小塚より歴史知ってんじゃん」
「ホント！僕、そこまで知らなかったよ！」
翼が歴史に関わる知識を披露したのはこれが初めてだった。
前に桃太郎伝説について話した事があったけどその時はほんのちょこっとだけだったから。
「小塚のジャンル広すぎるからなぁ」
ん、理科と社会全般だもんね
生物、科学、物理、地学、天文学、地理、政治、経済、それに歴史。しかも日本史と世界史の両方だから確かに広すぎる。
「今度から歴史担当分野は美門にすれば？」
黒木君からの言葉を受けて若武が頷いた。
「よし、歴史は小塚の社理から分離させて美門の担当とする。」
そう言ってから満足気に微笑んだ
「勝色かぁ…やっぱ勝てるよな…勝色来てたら絶対だ。」
上杉君がその目に皮肉な光を煌めかせる。
「調子にのってんじゃねーよ。そんな風に浮わついてるから先週の試合みたいな事になるんだ。」
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作者名：驪乃 | 作成日時：2021年6月3日 21時
