造花は無垢に嗤う (ページ10)

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体育は昔から得意じゃない。
元々貧血持ちで日光下に長時間いるとすぐにふらつくし、暑さに弱い、それに元々運動能力が高くない。

だからこそ11月の今は私にとっては都合が良いのだが、思いもよらないアクシデントで保健室にお世話になることになってしまった。

｢いったいなあもう｣

グラウンドの左端でサッカーをしていた男子チームのボールが左頬から後ろの耳にかけての範囲に直撃した。頭がじんじんと痛む。

申し訳なさそうに謝られたから大丈夫だよと答える他なかった。

｢先生いないし｣

静まり返った保健室
立てかけてあった鏡で頬を映すと既に赤く晴れ始めていて、耳朶も心無しかいつもより熱を持っているように感じられた。
無断になってしまうが仕方なく冷凍庫から保冷剤を取り出しカバーに入れ患部に当てる。今度は冷たすぎて痛かった。

｢暑い。｣

機械音のみが微かに聞こえるその部屋の中で、ぽつりとその一言が響く。
自分のものでは無いその声。
そもそも自分以外の先客がいたことすら気が付かなかった、というのに

｢、あれ。どうしているの｣

シャッと、豪快に開いたカーテン
ゆらりと上半身を起こした彼は私を見るなり嬉しそうに目を細めて微笑む。
若干顔が火照っているように見えるのは気の所為ではないらしく

｢別に、…もう戻るから｣
｢まって｣

｢そこの水、俺のだから取ってくんない？｣

ゆっくりと息を吐きながら、彼が指さした先
私の真正面に置かれていた飲みかけのペットボトル。
伸びた前髪から覗く両眼がどこか熱っぽくて、びくりと震えた肩。
無視するように立ち去ろうとすれば、俺いま8度近くあんの、歩けない。と、続けて

｢お願い、喉乾いちゃった｣

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