造花は無垢に嗤う (ページ15)

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ちょうど曲がり角でぶつかったのは私と同じくらいの背丈の女の子だった。

ごめんなさいと小さな声が聞こえて
こちらこそと返そうとした言葉は急ぎの用事があるのかそのまま小走りで去ってしまった為に、彼女には届かなかった。

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｢…最悪｣
｢なあにが？｣

見なかったことにしたところでこの男が見逃してくれるとは到底思えない。
しかも後ずさりしたところで背後は階段だ。その長い脚から逃げ切れる自信だってない。

踊り場で最も顔を合わせたくなかったその人はにっこりと笑ってみせる。

｢ずっと会えないんだもん寂しかった｣
｢そう｣
｢俺も文系にすればよかったあ｣

ヘラヘラと何が楽しいのか。
視線を合わせたくなくて斜め下へと意識を集中させていると、嫌でも視界に入ってくるその右手。
ぎゅっと何かを握りしめているその指の付け根のあいだから薄い生地がはみ出している。

｢あーこれ気になる？｣
｢べつに｣
｢落としたから渡しに行くんだ～｣

何となく。私の中で辻褄があってしまった。
ああきっと私とぶつかったのは先程この男を中庭に呼び出していたあの子で、そのハンカチの持ち主もその子なんだろう、と。

｢そう、じゃあ私急いでるから｣

目を合わせずに
そのまま横をすり抜けようと足を踏み出す。

｢待って｣

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