造花は無垢に嗤う (ページ2)

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寒くなった時期の朝の教室は異様に寒い。
お昼くらいになってやっと暖かいなと感じるくらいだ。首に巻いてきたマフラーをひざ掛けにしながら課題の確認をする。

｢Aやん、おはよ｣

｢そりゃ私の席だからね｣

唐突にこちらに振り返ったと思えば、そんな軽い挨拶をしてきた彼は真ん丸で大きな瞳でゆったりと瞬きをしながら口元を緩ませた。
平塚は2年になって初めての席替えで隣の席になったクラスメイトだ。
いつもぼんやりとしていて正直掴みどころがないけれど、それなりに話しやすいし面倒臭くない。

｢女子が転校生転校生言ってたけどどこのクラスなんだろね｣

｢さあ、少なくともここじゃないでしょ｣

平塚の口から出た話題に何となく既視感を覚えたのは
今朝昇降口の前を通りかかった時、元気めな女子生徒らが転入生の話をしていたような気がしたからだ。
元はと言うと学年主任がうっかり口外してしまったことが原因でその話は瞬く間に学年中に広まってしまったらしい。

心底どうでもいい話ではあるけれど、転校生の身になって考えてみれば同情してしまう。
後で一緒に見に行こうよ、だなんて愉しそうに誘ってくる彼の頭を軽く叩いて前を向かせた。

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