造花は無垢に嗤う (ページ1)

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人間とは自分にとって都合の悪いことは簡単に忘れる生物だという話を聞いたことがあるけれどそんなのはでまかせだ。個人差があると言われればそれまでだけれど、少なくとも私は、私はそれには該当しない。

昨日の晩御飯、今朝の星座占いの第1位
まだ記憶に新しいはずのそれらはいとも簡単に脳内から蕩け出すというのに、それは私がいくつ歳を重ねようとも消失してはくれないのだから。

｢、さっぶ｣

二階の窓から覗き見をする。
悪趣味だなんて言わないで欲しい。
楽しそうに談笑をしながら繋がれた手と手、さらりと揺れる彼女の髪を抑え込むように自分のマフラーを巻き付けるその横顔

｢朝苦手なくせに｣

好きな子のためだったらそんなに簡単に早起きできるんだね、と届きもしない嫌味を吐いてネクタイを結んだ。
朝の7時半、幼なじみの元木湧は付き合って半年になる可愛い彼女とともに玄関から姿を現した。
2人並んで小さくなっていく背中を窓越しに見つめる。

せめて朝視界に入れることのないように、もう少し遅くに起きようかななんて、そんなことを考えながらバックに教科書を詰め込んだ。

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