Je t'aime〜愛しの彼との短編集 (ページ7)

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壮絶なる勘違い#1 〈jr〉ページ7

大学2年の夏の某日

「実はさ、オレ前からずっとAちゃんのこと
好きなんだよね」
「オレと付き合ってくれない？」

『、、え？』

頭がクエスチョンマークで埋め尽くされる。
ちょっと待って、これどういうこと？

発端は数十分前のことだった

私は3コマもぶっ通しで講義があって、半ば死にかけで歩いていたのだ。
それでも、なんとかイヤホンをつけて音楽を聴こうとした

そこに彼、田中樹が現れて

「ちょっとだけ、時間良い？」

と聞いてきた。
同じ大学の人ならこの名前を聞いたらまず最初に

陽キャ女性パリピ

という単語が出るだろう。
とにかく派手でいつもパリピ集団の中心にいて、女性が途絶えたことがないので有名なのだ。

私もそれこそ誰も友達がいないような根暗じゃないとは思う。一般的な大学生の友達の数はいるはず。
けれどこの陽キャは桁違いなのだ。友人関係も、女性関係も。全てにおいて。だからこそ関わらないようにしていた。というか関わるポイントがない。

でも、時々見せるあの目が三日月になる笑い方や、
実は繊細で優しいところを知ってしまって。
実は密かにずっと恋心を抱いていた、なんて誰にも言えない。

それでも私も話したことなら数回だけある。たまたま講義が被った時に、「さっきの後半何言ってたか聞こえた？笑」
と話しかけてこられた。
心臓がドギマギ音を立てるのを知らないフリをして、『いや、全然分かんなかった』と至って普通に答える。、、、あれ、私答えられたよね？

そこから偶に向こうから話しかけられて、それに応じて、、というのはあったが、それ以外全く、全っく接点がない。
それなのに何故！？
え！？！？何かしましたっけ！？！？

内心大混乱の私の心中なんてつゆ知らず、

「ここで良い？」

と、そのまま近くのカフェに入り、
冒頭に至るのである。

「ね、ダメかな？」

真剣に私の方を向いて話してくれる。

あぁ、こんな顔して見つめられたら、そりゃ誰だって恋しちゃうよね。
きっと、私なんてあのいつも取り巻いている女の子の一部にしかなれない。一部以外のどうでも良い存在かも。
それでもやっぱりここでは恋心たるものが主導権を握り、

『私で良ければ、』

なんて答えてしまった。

「え！！マジほんとに！？やったやった！！ありがとう！」

私の手を取ってガバッと立ち上がる。

絶対大事にするから！笑

ニヘ、と笑った彼の顔をみて、

あぁこの笑顔に惹かれたんだなぁ、と思わず頬を緩めた。