Je t'aime〜愛しの彼との短編集 (ページ17)

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金のベルの下で#1 〈yg〉ページ17

『うー、さっむ、』
オフィスから出ると1番に、刃のような風が頬を掠めた。

「確か今日雪予報だったわ、そんだけあって結構さみぃなぁ笑」
先輩が、手袋持ってくりゃ良かったと笑いながら手を擦り合わせる

どうしてもやらないといけない仕事が見つかったのが
私が7時に退社しようとしたとき。
いつもの月末の7時だったら確実にもっと人がいたのだが、
なんていったて今日は師走の出社最終日。だから早くに多くの社員が家庭や恋人のもとへ帰っていた。

それで残っていたのは私と、イケメンで仕事ができるエリートなのに彼女を作らない、でも凄く良くしてくれる先輩の2人だけだった。
死にそうになりながらやっと終わらせて、今22時である。

「こんな遅くまでわりぃなほんと。今日までありがと笑」

ふいに先輩が呟いた。
突然のことに驚いて

「とんでも無いです！！」

と勢い込んで答えてしまう。

「はは笑じゃ、お疲れ。よいお年をな〜」

会社を出てから数分後、先輩はそこからバスのため右に曲がっていった。
ひらひらと手を振りながら歩いている先輩の後ろ姿に慌てて、
今年もありがとうございましたー！！良いお年をお迎えください〜！と言う。

あっ、手がグットマークになった。

もう29日で今年も3日で終わる。いや、あと2時間で2日になるか？お正月休みとして5日間の休暇を手に入れたが特にすることもない。随分と寂しい人間じゃないか、と自分にツッコむも、事実のためイマイチキレがなかった。

LEDによってラッピングされた木々の下を通って駅まで向かう。あれだけキラキラとしているのにどこか気まずそうなのはきっとクリスマスが終わったのに未だに外されていない金のベルのせいだろう。誰か外してあげなさいよ。

5日間の、暇。

私だってやりたいことがないわけではない。

いや、行きたいところと言った方が正しいか？

でもまぁ、どっちにしても迷惑なだけだからね。

あえてするとかそういう趣味はない。

『会いたいなんて、女々しいこと言えないって笑』

誰もいないのを良いことに、ぽつりと呟く。

私が今いるのは、日本の東京。
貴方が今いるのは、フランスのマルセイユ。

同期としても大切な人としても、ずっと一緒だったから、
初めて言われた時は本当に驚いた。
言葉はどうするの！？いつから！？と矢継ぎ早に質問攻めすると、順番に言うから笑と宥められたあの日が懐かしい。