【48】スペード ページ5
sideキッド(黒羽快斗)
フランスの首都パリにある美術館。その中でも有名なルーヴル美術館に、一般人には公開されていない。ごく僅かな関係者によって管理されている宝石があった。
その宝石を、日本にあるあの有名な鈴木財閥が買収し…東京米花町の歴史のある美術館に展示し、一般人にも公開している。
それに目をつけた俺は、さまざまな警備が固められた美術館に潜入し下調べを行い予告状をおいて、じいちゃんに連絡を入れた。
じいちゃんが営むBARに着くと、上着を椅子にかけてマグカップを手に取りコーヒーを淹れて、カウンターの席に座った。ちなみにじいちゃんは今家を出ている。
静かな部屋の中で、バタッと机に突っ伏して目をぐりぐりと擦る。昨日の夜中まで今回の案件について調べていたからか、目がじんわりと少し痛む。
湯気たつマグカップを見つめる。マグカップにはトランプのスペードのマークがついていて、随分前にあの人からもらった大切なものだ。大事に使ってきたので目立った傷もなく、淡いカウンターの光に照らされてキラキラと光っている。
このマグカップを見ると必ずあの人のことを思い出す…
俺がまだ小学生の頃、近所で行われていたお祭りに青子と参加していた。
「ちょ!快斗待って!」
「もたもたしてっと置いてくぞ?」
青子の手を引っ張り、人混みの中を駆けていく。青子が気に入りそうな屋台を見つけたから、早く見せたくて必死に走っていると、目の前があまり見えておらず、誰かの足に勢いよくぶつかってしまった。
「いてて…」
額を擦ると手に血がついてしまった。傷口はそれほど大きくはないが、ヒリヒリと痛む。
青子はどこだろうか…この人混みの中で手を離してしまったからか、辺りを見渡しても見つからない。
それよりも…
後頭部から降りかかる大きな影、目の前には食べ物の残骸が転がっていた。ゆっくりと見上げると、そこには般若面をした男がたっていた。
「このクソガキ!!!どこ見て歩いてんだ!!」
ガシっと頭を掴まれ、髪の毛を引っ張られる。
「まったく親は何してんだ!!この野郎…お前に弁償してもらうからな!」
弁償という言葉に体がビクッと跳ねた。男は俺のことを殴ったり蹴ったり…相当イライラしている。
その光景を見ている周りの人間は助けるわけでもなく…異物を見るような目で、ただ可哀想と呟いていただけだった。
575人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいりす(プロフ) - えっ!!凄い!オリジナル…(感激)語彙力からまとめる力から全てが神がかってる!!!めっちゃ応援します!更新待ってまーす♪ (8月18日 21時) (レス) id: ef45f85bc9 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです。オリジナルが多くて驚きました。 (8月17日 16時) (レス) @page20 id: 2876b83137 (このIDを非表示/違反報告)
流百(プロフ) - 単純に嬉しいです。軽く泣きそうです。頑張ります!!!! (2023年3月6日 17時) (レス) id: d8225e9a51 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 絵もお上手ですし文も読みやすい…!これは伸びるやつだ!更新頑張って下さい〜! (2023年3月6日 0時) (レス) @page2 id: 925a09eca2 (このIDを非表示/違反報告)
流百(プロフ) - まみこさん» ありがとうございます!コメント本当に励みになってます! (2023年3月5日 22時) (レス) id: d8225e9a51 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:流百 | 作成日時:2023年3月5日 21時