【65】口実 ページ22
「ここら辺で大丈夫だ、ありがとう。」
ポアロの近くの道路脇に駐車し、助手席の扉を開ける。
力なくふらふらと立つ姿に同情の目を向けていると、ポツポツと雨が降り出した。
気にせず歩き出すので、私は咄嗟に後部座席にある傘を差し出した。
「…すぐそこだから大丈夫さ。」
『いいから、受け取ってください。』
「でも、」
確かにここからポアロまでそこまで距離はない。しかし、雨脚も強いためずぶ濡れの状態で働くのも、彼の今の体調を見てとても心配だ。
頑なに受け取らないため、無理やり傘を押し付ける。
『…これであなたに会える口実ができましたね。』
適当に言い訳を並べて、突っ立ったままな彼に一礼して車を出した。実際傘を返してもらうのにもう一度顔を合わせるだろうしね…
「…。」
一方彼は疲れた頭では彼女の発言の解釈ができずに、暫く放心した状態で車が去るのを眺めていた。
降谷さんを送った後、朝食を取るために近辺のカフェを検索するがまだ時間的に開店していない所が多く、結局コンビニで弁当を買うことになってしまった。
車の中でさっさと弁当を食べ終え、一度家に帰って少しだけ昼寝をするつもりが、時計の針はいつのまにか午後に差し掛かっていた。
午後も特にすることもなく暇なので、街の大型ショッピングモールへ向かった。週の終わりということだけあってよく賑わっていて、駐車場に停めるだけで一苦労だ。
服屋や飲料店を一通り見終わり、生活用品を大量に購入して満足した私は通りかかったゲームセンターで足を止める。
小学生の男女らがガラスにへばり付き目を輝かせながら、景品を眺めていた。確かあれは、最近発売されたばかりのゲーム機だろう。
「博士!もう100円玉残ってないのかよ?」
「もう一枚も残ってないわい!諦めてわしが開発したゲームを…」
「えー、博士のゲームつまんなーい!」
「そうだぞ!毎回同じようなやつしか出てこねーしよ…」
「うーん…困ったのう…」
あの様子を見るからに、大分お金を積んだことは確かだが残念ながら景品はそれ程動いておらず、むしろ出口から離れてしまっている。
私はカバンから財布を出し、彼らの横からお金を投入した。あからさまに無言になり、彼らは私を見てコソコソと話し始めた。
くるくると掴む部分を操作し、景品のタグの部分に引っかけると、綺麗に穴の中へと落ちる。
「「「えー!!」」」
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あいりす(プロフ) - えっ!!凄い!オリジナル…(感激)語彙力からまとめる力から全てが神がかってる!!!めっちゃ応援します!更新待ってまーす♪ (8月18日 21時) (レス) id: ef45f85bc9 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです。オリジナルが多くて驚きました。 (8月17日 16時) (レス) @page20 id: 2876b83137 (このIDを非表示/違反報告)
流百(プロフ) - 単純に嬉しいです。軽く泣きそうです。頑張ります!!!! (2023年3月6日 17時) (レス) id: d8225e9a51 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 絵もお上手ですし文も読みやすい…!これは伸びるやつだ!更新頑張って下さい〜! (2023年3月6日 0時) (レス) @page2 id: 925a09eca2 (このIDを非表示/違反報告)
流百(プロフ) - まみこさん» ありがとうございます!コメント本当に励みになってます! (2023年3月5日 22時) (レス) id: d8225e9a51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流百 | 作成日時:2023年3月5日 21時