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それにしても暇だ、自分を調べるにしても限度というものがある。
時計もない為に時間間隔が狂うし、腹時計もこの身となっては信用できない。
本も観察対象もない今、これからどのように時間ををつぶしたものか。
生憎、俺の行動範囲は見る限り8畳分のみ。
ここから落ちたら、(とりあえず底があるのはわかるが)死なないかもしれないがまだ俺が不死身とも限らないし、痛いのは普通に嫌だ。
そもそも鬼に関しての情報が少なすぎる、人を勝手に鬼にしておいてあの男は無責任だと思うのは俺だけであろうか。
『…他の鬼、来てくれないかな〜。』
例の男のようにポツリと呟くと、空気を読むかのように、見知らぬ人、否"鬼"がやってきた。
童「おや?君があのお方の言っていた"家畜"くん、かな?
随分と細っちいのだね、食べがいがなさそうだ。」
その、しょんぼりと太めの眉の尻を下げ、小脇に若い女性の死体を抱えた青年、の見た目をした鬼は、俺の目の前に来た途端、そう俺を侮蔑した──本人にそういう意図があったかはわからないが、少なくとも俺はそのように解釈した──。
『何方ですか貴方、此方は名乗る名前もないやつですが。』
暇すぎて投げ出していた四肢を寄せ、座りながら睨みつける。
だが、どうやら俺には迫力が出せないらしい。
「俺は童磨、そんな怖い顔しないでよ!
俺は君のための餌を持ってきてやったんだぜ?
ほぉら、お食べ。」
俺の精一杯の威嚇にも臆することなく男は告げた。
女性の死体の肘から下を引きちぎり、童磨さん(と呼ぶことにする)は気味の悪い笑みを浮かべながら、俺の頬にペシペシと当てる。
そうか、これ(人間)は食べ物だった、忘れてた。
大分感に触る態度だが、一応俺のための行為だったらしい。
『…それはそれは、態々ありがとうございます。
だがですね、少し態度が気に食わないので直してもらえません?』
普通の事を言ったつもりだったのだが、きょとんとした顔で童磨さんは言った。
「え?だって君、家畜でしょ?
何でそんなものに気を遣わなきゃいけないんだ?
君も元人間ならわかるでしょ、食べられるためだけに飼われている動物たち。俺たちにとっての君はあの動物たちと同じなんだよ。
アレ、俺何か間違ったこと言ってる?」
俺、そんなのになるために、鬼にさせられたの?
え?地獄かここは???
『…いや、わからない。』
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串(プロフ) - 罷免さん» はじめまして、コメントありがとうございます。どツボにハマって頂けましたか…!正直癖の強い作品だと思っていたので、罷免さんを含め多くの方に評価して頂いている事実に毎度驚愕しております…。これからもちゃんと更新するので、作品共々よろしくお願いします! (2020年2月29日 2時) (レス) id: 94b567b340 (このIDを非表示/違反報告)
罷免 - どツボです…更新ありがとうございます!!! (2020年2月27日 22時) (レス) id: d073c1529e (このIDを非表示/違反報告)
串(プロフ) - はじめまして、コメントありがとうございます。楽しんでもらえるよう、予測できない展開にしようとこんがらがり気味ですが、面白いと言って頂けて嬉しいです!無計画なので変な点もあると思いますが、是非最後までお付き合いください。これからもよろしくお願いします! (2020年2月27日 20時) (レス) id: 94b567b340 (このIDを非表示/違反報告)
アクトレモン(プロフ) - とてもこの作品が大好きです!!今まで見たことがない展開などとても面白いです!更新頑張ってください (2020年2月27日 11時) (レス) id: 4bdd481c8a (このIDを非表示/違反報告)
串(プロフ) - ウルさん» はじめまして、コメントありがとうございます!会話文だけの夢小説が苦手だったので、情景や心情描写を出来るだけ挟むようにしていたのですが…、まさか読者様の妄想の糧になっていたとは思いませんでした笑 応援とても嬉しいです、これからもよろしくお願いします! (2020年2月22日 20時) (レス) id: 94b567b340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:串 | 作成日時:2020年2月15日 20時