ケージ:103 ページ7
「ね、なんで、なんでずっと……グルッペンが意地悪したから?大丈夫やで、アイツ見た目怖いけどそんな悪いやつやないし、あ、でもそりゃ、Aちゃんにあんなことしたんは、ちょっとアカンよ?でも、でもなそれもAちゃんの為やってん。」
「……シャオロンさん?」
口早にシャオロンさんの唇から溢れる言葉はどれも心当たりがないことばかりで。
最後にシャオロンさんと話したのは、どんな事だっただろう。最後にどこで、会っただろう?
考えようとしても、答えを出す前に矢継ぎ早にシャオロンさんが捲し立てる言葉にかき消されてしまう。
何のことをいっているかわからない。追い付けない。
「きっと、ほら、あのクソオヤジの、アイツのこと調べててん、よかった、よかったわホンマだいじなとこまで奪われとらんでおれだってそんな、あんなキモいオッサンにAちゃんがどうにかされてたらと思ったらおれ、だってあんなとこにいてそんな体やともーあかんて思うやんおれめっちゃ心配で、ほんまよかったなあ!よかったAちゃんがここにいる、おれ、おれ」
「っ……シャオロンさん!」
ぐるぐると定まらない焦点。私でも分かる。彼の言っていることが、支離滅裂だと。
さっきの鬱さんといいシャオロンさんといい、この豹変ぶりは少しおかしい。
ぎゅう、と骨張った手が私の腕を強く掴む。痛いくらいのそれは少し震えていて、やめてくれと突き放すことが正しいことなのか分からなくなる。
「わ、わかんない、です……。少し、落ち着きましょう。」
何が正解なんてわからないから、一先ず彼に落ち着いてもらうのが先決だと思った。不思議な話だ。少し前までは、この立場は逆だったのに。
自分でも何がなんだかわからない、というように視線をさ迷わせるシャオロンさん。まるで小さな子供。迷子だ。目線を合わせるように芝生に膝をつくと、おそるおそる、という風に大きな瞳が震えながら私を向いた。
「……Aちゃん。」
掠れた声が痛々しい。そんな声で名前を呼ばれたら苦しくなる。どうしてそんな声で、なんて聞く度胸も甲斐性も、弱虫の私にはない。できることは、ただ彼の側にいることだけ。きゅ、と拳を握って頷く。
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…! (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります! (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです!!とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です!!!!すき!!!! (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです!?!?!?!描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね!! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくわ | 作成日時:2020年2月26日 20時