ケージ:102 ページ6
シャオロンさんは中庭にいた。以前お気に入りなのだと肩に担いで笑っていたショベルを傍らに置いて、眠っている。
芝生に横たわるその影は、ぴくりともしない。上下に小さく揺れる胸だけが、寝ているのだということを教えてくれる。コネシマさんと元気に言い合いをしている姿からは想像がつかないほどの静けさだ。
眠っているのならば起こさない方がいいだろう。そうっと引き返そうとして、誰かいるんやろと掠れた声がした。
「隠れんと、出てこいや。分かっとんねん。」
久方ぶりに聞くその声からは随分と色が失われているような気がして、心がざわつく。
振り向くと、シャオロンさんは先ほどと比べて寸分も違うことなくそこにいた。体を起こすでもなく、視線をこちらにやるでもなく、ただ、そこに。
芝生を踏み締める。さく、さくと音を立てて近寄れば、シャオロンさんは瞼すら開けていないようだった。
さあ、と風が吹く。舗装された小道の脇に生えた鈴蘭が小さく揺れた。
「……？」
「しゃおろん、さん。」
控えめに名前を呼ぶと、それまで歩み寄っても何にも反応を示さなかったのが嘘のようにシャオロンさんが飛び起きた。
え？え？と小さく繰り返しながら、ぜんまい仕掛けの人形のようなぎこちない動きで、芝生を這う。
そのまますがるように、私の腕にしがみついた。
「きゃ、」
「Aちゃん？Aちゃんやんな？な、なんやのもお！えらい久しぶりな気いする……。」
はは、と乾いた笑みを溢すシャオロンさん。シトリンの瞳ばかりがぎらぎらと輝いている。彼は、こんな顔をする人だっただろうか。
「しゃ、シャオロンさん、」
何とも言えない怖気に思わず彼の名を呼ぶ。けれどそれも意にも介さない様子で、忙しなく視線をさ迷わせながらシャオロンさんは捲し立て始めた。
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (
レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…！ (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります！ (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです！！とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です！！！！すき！！！！ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです！？！？！？！描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2020年2月26日 20時
