蜃気楼より不確かな【kn】 ページ6
幸の薄そうな女だというのが、Aに対するコネシマの第一印象である。
「いい天気だねえ。」
頬杖をつき、眠たそうに瞼を細めながら目の前の女は呟く。
大学の中庭、カフェテラス。
飾り気のないまっすぐな黒髪が風にゆれる。鼻先を掠めるそれをしっしと追いやり、「しばれやそれ、邪魔やねん。」と言えば素直に女は従った。シャンプーだろうか。女特有の甘い香りがふわりと漂う。慣れた手つきで長い髪を一纏めにすると、何事もなかったかのようにまた頬杖をつき、青空を見つめて目を細めた。
浸ってんじゃねえぞ、とコネシマは心の中で悪態をついた。目の前の自分などきっと、女…………Aの眼中にはまるで入っていない。
どこを見つめているかもわからないその瞳が嫌いだ。
病人みたいに白い肌が嫌いだ。
体温が低いのも気に入らない。
連絡が全然つかないのも、たまにしか大学に来ないのも、全然飯を食わないのも、全部、全部全部コネシマにとっては気にくわなかった。
「お前、来期はちゃんと授業こいよ。そろそろ留年すんで。」
「うん。」
「……。」
返事だけは一丁前である。Aがコネシマと約束をして守った回数など、片手で数えるくらいのものだった。
コネシマはわかっていた。この女とする『明日』の約束ほど不確かで不毛なことはないと。
やれと言われたことはやらない、約束は守らない、ろくに人の話は聞かない。大学にいる癖して大してやりたいこともないらしいし将来について聞いても曖昧なことしか返さない。まるでビジョンがない。
やればできるのに、努力はおろかできることすらしないAのことが、コネシマは心底理解できなかった。
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上原蒼(プロフ) - この小説めちゃくちゃ好きです。寥、銀世界、を読んだときに心がきゅっとしました。語彙力なくてうまく伝えられないのですが、こんな感じのすきなのでテンション上がりました((更新頑張ってください応援してます。 (2020年3月19日 20時) (
レス) id: 908de47cf9 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - ラスさん» ラスさんはじめまして。コメントありがとうございます。ぜひぜひ！自分の描いた文章が漫画になるなんて夢みたいです……嬉しいです。差し支えなければ、完成した際にはぜひ私にご一報ください。(見たいので！！) (2020年3月18日 18時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
ラス(プロフ) - 大変失礼だということは充分承知しております。が、どうしても欲求が抑えきれず、このようなお願いをしている形になります。もちろん個人観賞用ですので晒したり、自作発言などは一切しません。良いお返事が帰ってくることを期待しております。よろしくお願いします。 (2020年3月18日 10時) (レス) id: b23ccd4b10 (このIDを非表示/違反報告)
ラス(プロフ) - 初めまして。好きでs(((失礼しました。敬愛する貴方へ。を読ませていただきました。文の中に惹き込まれるような素敵な物語でした。ここで失礼を申してお願いがあります。個人観賞用として物語に沿った漫画を書かせていただきたいのです。(続きます) (2020年3月18日 10時) (レス) id: b23ccd4b10 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - ビリーさん» お返事が遅くなりすみません。申し訳ない、だなんてそんなことはないですよ！好き、だけで充分です。とっても嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年2月24日 9時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2020年1月13日 21時
