志摩ちゃんうふふ。 (ページ21)

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「志摩さん」

確認を終えた糸巻が分駐所の入口で志摩に手招きをする。スっと立ち上がり小走りで糸巻の元へ向かう志摩。なんとなく、糸巻の纏う雰囲気というか、なにかあの場では言いづらい事を言おうとしているような感じが感じ取れた。

「志摩さん、あの津崎さんなんですけど…」

「あぁ、何か分かりましたか？」

「それが、何も分からないんです…」

「何も…？」

「はい。まず住所の青葉区あざみ野なんですけど、横浜市に青葉区という地域が存在しないんです。もちろんあざみ野という地域も」

「存在しない…？」

「それだけじゃないんです。津崎みくりさん、戸籍が無いんです」

「は？」

「念の為旦那さんの津崎平匡さんの戸籍も調べたんですけど、こちらも同様に存在しませんでした…」

どういう事だ。住所は1万歩譲って分かるとして、戸籍が無いのはおかしすぎるだろ。何らかの理由で出生届が提出されなかったか。だが、生活に困っているような風貌では無かった。そもそも、夫婦揃って無戸籍なんて事が有り得るのか。
志摩の頭は混乱するばかりだった。

糸巻に礼を言い、みんなの元に戻る。

「あ、志摩～どうだった？」

「津崎さん」

「いや無視かよ」

「あなたは何者ですか」

「何者…？」

「横浜市に青葉区あざみ野という地名は存在しませんでした。それと、あなたの戸籍、そして旦那さんの戸籍も存在しません」

「え…」

「あなたは何処から来たんですか」

「ちょっと待って志摩、どういうこと？」

「そのままだ。戸籍が無い、つまり出生届が提出されていない。日本には少なからず居るらしいが、戸籍が無いなら家も借りられず仕事にもつけない。」

「……」

もちろん志摩や伊吹たちも戸惑っていた。だが1番戸惑っているのはみくり自身だった。住所が存在しない？戸籍が無い？そんなはずない。だって自分はちゃんと会社員として働いているし、そもそも婚姻届だって出した。不備があればすぐに分かるはずだ。