はんぶん / 辻󠄀皓平 ページ1
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「あーーー、また絡まった、もうあかん」
「そんな絡まる?普通」
からまったイヤホンを解こうとごそごそ忙しなく動く私とは対照的に、至って冷静にゲームをする辻さん。彼女よりゲームか、と問いつめてやりたくもなったが、目の前にある憎き有線を解くために意識を集中させた。
辻さんはこちらをちらりと見ると呆れたように溜息をつき、わたしの大好きな言葉をはく。
「貸しや、解いたるから」
「まってました辻さん」
「Aこれ言われたいから有線から変えへんとかちゃうよな?」
「それもですけど他にちゃんと理由ありますて」
「それもて、てかどうやったらこんな絡まんねん」なんてグチグチ言いながら辻さんを細くてすらっと長い指でひとつひとつ丁寧に解く。これまた手の動きさえも綺麗に見えてしまうほど首ったけなもんで、恥ずかしくなる。
やっと解けそうなイヤホンを他所に、辻さんは沈黙を遮るように言った。
「いつもイヤホンで何聞いてんの」
「好きな歌です」
「そらそうやな」
「聞きます?教えますよ」
「いや、いいわ。Aのやつ片方貸してくれたら2人で聞けて一石二鳥やろ」
「有線ふたりではんぶんこするんですか?辻さんロマンチック〜〜」
「オッケー二度と言わん」
「やだなあ冗談ですよ」
辻さんを宥め、解けた少し長いイヤホンを共有する。自然と近くなった距離に胸がはりさけそうで、音楽よりわたしの心音の方が大きい気がして、たまらなかった。
好きな音も耳に入らないほど、辻さんの横顔に見入ってしまう。なさけないなあと深く思った。
「この曲ええな、俺も好きな感じやわ」
「ほんまに!ええ、ライブとかいきたいし、うわあ、辻さんとしたいこといっぱい」
「じゃあこれからもAからはずっと離れられへんなあ」
心なしか嬉しそうに笑ってくれた気がして、辻さんの頭を撫でる。もふもふで飲み込まれそうだ。大人しく撫で受ける彼にあたたかい気持ちになる。
机の上にあったわたしのお菓子はいつの間にか辻さんにたべきられていて、扇風機にくすぐられ、かさかさと軽快な音を立てていた。
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ちゃむ - 初めまして!今もリクエスト受け付けていらっしゃったら、ガクさんと眼鏡の後輩夢主のお話が読みたいです〜〜!2人ともが恥ずかしがり屋さんだけど2人ともが頑張るみたいなものだと嬉しいです! (2022年1月19日 20時) (レス) id: a0ffb3aa64 (このIDを非表示/違反報告)
いたう(プロフ) - ガクさん最高です!!!真空嬉しいです…!!! (2022年1月11日 18時) (レス) @page13 id: 1611f7bf79 (このIDを非表示/違反報告)
伊藤(プロフ) - うにじま。さん» 本当ですか!!。めちゃめちゃ嬉しいです…!これからも何卒よろしくお願いします……!。 (2022年1月11日 18時) (レス) id: 31619474bd (このIDを非表示/違反報告)
うにじま。(プロフ) - ありったけの首ったけ!最高です..(;_;) (2022年1月11日 11時) (レス) id: 32339675a3 (このIDを非表示/違反報告)
伊藤(プロフ) - ayuminmachatadaさん» わー!ほんとですか!よかったです…!!これからも何卒よろしくお願いします!。 (2022年1月11日 10時) (レス) id: 31619474bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊藤 | 作成日時:2021年10月7日 17時