おそばのきもち 〔 伊藤幸司 〕 ページ21
．
「お蕎麦とラーメンとおうどんと素麺」
「お蕎麦」
「言うと思った」
伊藤さんは今日すべりたおした私を慰めるべく楽屋に出た瞬間 「ねえ、時間ある？」とわたしを繁華街へ連れ出した。
いや、悪いことでは無いのさ。嬉しい。でも、なんか、麺以外の選択肢がまるでないな。
「お蕎麦ふたつ。ああ、両方並で」
「‥‥‥いとうさーん」
「なに」
「すべりすぎた」
「俺らなんてあれ毎日してたから」
「どういうメンタルしてるの」
「こういう感じ」
「うわーうぜえ」
「こら」
伊藤さんは頬杖をつきながら面倒くさそうに私を見る。そんな顔するなら飯なんて連れてこないでくれ、と当たってしまいそうになる自分すら嫌になる。
ため息をついた彼に顔を上げるとぽつりぽつりと話し出した。
「僕はね、Aが困ってるなら助けてあげたいし、悲しんでるなら一緒に背負ってあげたい。嬉しいなら喜んであげたいし。まあ、エゴに過ぎないけど」
「‥‥エゴねえ」
急に饒舌になるやん、と伊藤さんに笑うと苦虫を噛み潰したような顔になる。その顔、久々に見たな。
私も伊藤さんには笑っててほしい。そう言おうとすると、遮るように蕎麦が運ばれてくる。
「‥いただきます」
「いただきます。ねえ、伊藤さん」
「なに」
「私はね、私の事そんなに理解しようとしてくれてる伊藤さんがすきだな」
「‥‥褒めてもお金しか出ないから」
「お金出るならずっと褒めたるわ」
ずるる、とすすった後、咀嚼しながら「いや、違うんだけど」と訂正する。もごもごしやがって、と悪態を着くのはやめた。
「いや、僕はAの傍にいたいだけでね」
「蕎麦だけに」
「うわ、もうなにも喋りたくない」
「ごめんて、冗談」
「もう。だからまあ、大切に思ってるよ」
「‥‥恋じゃん」
「え、これ恋なの？」
「恋だよ」
「恋なのかあ」
納得できなさそうに蕎麦をすする。やっと恋を咀嚼しきれたのか、恋！？と声を荒らげる伊藤さんに耳を塞ぐ。
ごめん、とこぼした後、伊藤さんは狂ったのか「この蕎麦、風味がいいね」と言った。
それに 「は？」とついてかえした。
．
グレープフルーツ 〔 東ブクロ 〕→←らしくない。 〔 綾 〕
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ゆいみょん - 脱字申し訳ございません。甘酸っぱいストーリーを希望しております、よろしくお願いしますm(_ _)m (2021年5月24日 0時) (
レス) id: 81b8449bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいみょん - 伊藤さん» ありがとうございます、楽しみにしております！甘酸っぱい感じのストーリーが細かいシチュエーションなどは伊藤様にお任せします、よろしくお願いしますm(_ _)m (2021年5月24日 0時) (レス) id: 81b8449bb6 (このIDを非表示/違反報告)
伊藤(プロフ) - ゆいみょんさん» ゆいみょん様、初めまして。コメントありがとうございます。承知致しました、移行先での消化となりますがよろしければ書かせて頂きたいなと思います。 (2021年5月23日 13時) (レス) id: 31619474bd (このIDを非表示/違反報告)
ゆいみょん - はじめまして、リクエストをお願いしたいのですが、ハナコ秋山さんは可能でしょうか？？ (2021年5月23日 1時) (レス) id: 81b8449bb6 (このIDを非表示/違反報告)
伊藤(プロフ) - なおひとさん» はじめまして！良かったです！私も辻さん大好きなので（笑）よろこんでいただけて良かったです！ (2021年5月22日 23時) (レス) id: 31619474bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊藤 | 作成日時：2021年4月16日 22時
