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「でもAさん、女捨ててますやん」
「男みたいなもんでしょ。なに衣装でスカートとか着とるんですか」
久しく共演した彼らはやはりまだそれを面白がっているようだった。
あはは、と適当に流す中ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべる彼らに背筋が凍る。
「まあまあ、私は女やからスカート似合ってまうんですよね。これも志摩ちゃんセレクトで」
志「言わんでええわ」
「志摩さん、Aさんの為にスカート選ぶとか男にスカート選ぶんと同じですよ」
会場が少し凍り出したのを他所にまだそのノリを続けるか。
「Aさん、女のくせに女らしないしおもろないんですから。大人しく裏方でもしといたらどうですか？」
面白くない。女のくせに。女らしくない。
なにかが壊れた気がした。手のひらに爪がくい込む。悔しい。
リ「おもろい冗談言うやん、どないしてん」
盛「Aは女やで。俺らにはついてるもんついてないんやからな」
会場が揺れる。ゲストで呼ぶ予定だった見取り図がいきなり出てきたんだ、無理もない。
けど、なんでいきなり出てきてん。リリーさん。盛山さん焦ってたの見えたぞ。
志「リリーさん盛山さん焦ってましたよ」
リ「俺が無理やり出てきたからな。いやー見てられん。おもろないわ。
いつまでそのノリやるん。好きな子いじめたなる子供か。羞恥心で先生泣いてまうわ」
「いや、そんな訳ないでしょ！」
猫かぶりな彼ら。リリーさんの発言で笑いが帰ってきたところで司会としての仕事を成し遂げた。
「ありがとうございました！」
劇場の幕が降りる。疲れた、と楽屋で口々に言葉がこぼれる。
リ「大丈夫やったか、A」
「あー、まあ」
リ「あいつらほんましょうもないな。最後までお前のこと睨んでたんも丸わかり」
「睨まれてました？」
リ「え、なんで気付いてないん？アホなん？」
リリーさんはいち早く私の元へ駆けてきては、悪口を言って帰ってしまった。
でも、リリーさんが居てよかった。
「リリーさん！」
リ「なんや！」
「ありがとうございました！」
リ「今度叙々苑な！」
「無理ですよ！」
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作者名：伊藤 | 作成日時：2021年4月8日 4時
