〇 ページ6
あのあと本当に家まで送ってくれた正門先輩。家の前で、じゃあまた明日なあって。中学時は部活に勉強に忙しかったし、彼氏ができたことの無い私にとって家まで送ってもらったのは初めてで、すごく嬉しい。夢見心地とはこのことだ。
次の日、正門先輩に電車でもしかしたら会うかなって思ったけど、まあそんなことも無く。ほぼ満員に近い電車に乗り込んだ。
朝は活動あるのかな、一応部室見に行った方がいいかな、と思って見に行く。昨日1日でなんとか道は覚えられたみたい。迷うことなく進んで、昨日はちゃんと見ることが出来なかった、Aぇ! 部 と書かれた部室のドアノブを捻る。
...開けた。昨日小島先輩は鍵の管理は正門先輩って言ってた。じゃあ、
「おはよ、自分早いな」
「正門先輩...」
おはようございます、と抜け切らなかった部活のくせで体を30度に折り曲げる。礼儀正しい子よなぁ、と朝から昨日と同じ優しい笑顔を浮かべる正門先輩。
「俺、これからちょっとギター触るんやけど、Aちゃんどうする？」
そのアコギ、正門先輩のものなんだ。青いギターもあるけど、それも正門先輩のなのかな。
「聴いていってもいいですか？」
「もちろんええで、そんな大したもんちゃうけどな」
謙遜しつつも徐ろにアコギを弾き出した先輩は、正直言ってすごくかっこよかった。
「...ありがとうございました、ごめんなさいお邪魔しちゃって」
「全然。結構な頻度で朝も誰かかしら来てるから、いつも通りやで」
正門先輩のおかげですっかり目も覚めた。いい朝ってきっとこういうこと。
「そういえばAちゃん、関西弁じゃないよな。出身は？」
「東京です、父の転勤で去年大阪に」
「だから標準語やねんな、じゃあここで。また放課後な」
ひらひらと手を振っていく正門先輩に頭を下げ、教室へ入る。何人かはおはようを言ってくれるのでそれに応えていると、佐野くんと目が合った。
「遅かったな」
「部室に顔出してきたの」
「正門くんおったやろ、他の人は？」
「いなかったよ？」
ふーん、って自分で聞いてきたくせに。興味なさげ。
「...俺も明日から顔出そ」
「なんか言った？」
「なんもー」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Aぇ!group」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗々 | 作成日時：2020年5月21日 10時
