第壱百弐拾肆戦 兵子 ページ32
自分たちは刀剣であり、付喪神であり、長門によって新たな使命を得た刀剣男士である。誰に言われずとも、それは自覚していた。
「ありがとうございます」
少し安堵した様子で表情を綻ばせる主に、光忠も頷き返す。ふと何故、何の抵抗も無く神職とは縁のない彼に従う事が出来るのか、その答えがわかった気がする。
彼は常に自分の独善的な考えで物事を進めようとはせず、事あるごとに部下である自分たちに最善を問う。
多数決で決めたとしても、少数の意見を取り入れつつ策や案を考え、面倒であっても提案してくれる。だからこそ前途多難ではあったものの、人間不信だった長谷部を始め、三日月や薬研たち粟田口と徐々に信頼関係を築いていける。
「(この本丸は幸せだなぁ……)」
改めて主の敏腕っぷりに感嘆を溢しながら、光忠は楽しみだと小さく微笑んだ。強くなりたいと願った彼らが、やがて主の許で順調に戦果を挙げ始め、本来の刀剣としての本分を取り戻せる。
何よりも光忠が喜んだのは、主たる長門が戦うこと以外にも挑戦してみたいと伝えた刀剣男士たちを止めようとはせず、気の済むまでやり遂げろと言ってくれた事だった。
───戦うだけが兵子ではない、貴方たちは兵子でも物でもない。
真っ向から道具として否定されてきた自分たちにとって、最も嬉しい言葉だった。10年近く陸士の教官をしてきた彼にとって、当たり前の接し方だったのだろうと、光忠が嬉々として報告した際に鶴丸がのたまった。
『主は本丸に来て日が浅いが、見た目に騙されて侮っちゃあ痛い目を見る。俺も既にみた』
『鶴さん、長門君を驚かせて顔面に思いっ切り右ストレート食らったもんね』
未だ長門に心を開く気が無い大倶利伽羅だが、少しずつ主の実力は認め始めているようだった。審神者としては未熟であっても、指導者や人事に関しては歴戦の玄人である。
刀は人間の許を移ろう存在だが、付喪神として人と同じ身を得た今、その本質は千差万別。彼らを率いる主のやり方や、指導によって本質は変わってくる。
だが具体的に刀剣の本質とは何なのか───
主はそれを見極めようとしている。山姥切は彼の隣で、彼が使命を終えるその時まで共に在る。しかし二人が交わしたその約束を知る者は居ない。
◆◇◆
夕食後、それぞれ刀剣男士たちは湯浴みを終えると、忙しない3日目の夜がようやく訪れる。光忠や長谷部は大概、夕食を終えると水回りの仕事を遅くまで熟し、長門は私室で机仕事を夜中までやっている。
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大日戦(プロフ) - ミリアさん» とうらぶのクロスオーバーでしたら千銃士という作品との物をpixivに2ちゃんねる風としていくらか投稿しております。 (2018年6月25日 1時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ミリアさん» 返信遅れました。有難うございます。ジャンプは読んでないのでよく分からないです(汗 新作書く体力もないので今はこれを完結させることに心血注いでます。ご期待に添えず申し訳ありませんm(_ _)m (2018年6月25日 1時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く良かったです。続きが楽しみです。今後他の作品を作る予定があったら刀剣乱舞とコラボかトリップか転生したリボーンかKアニメかワンピースかワールドトリガーの作品が読んで見たいです。説明が下手ならすみません。これからも無理せず更新頑張ってください (2018年6月23日 14時) (レス) id: 673ec4ec31 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - どんどんハマってくねんけど、夢主かっこいい。好きやわw (2017年12月3日 23時) (レス) id: 5d79736247 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - よよいさん» ここは暫く留守にしてpixivの方で加筆連載をしております。ストックが無くなり次第、こちらに戻ってきてこれの納得のいかないところを重点的に修正しようと思っている感じです。 (2017年11月15日 18時) (レス) id: b1d4cab38f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880
作成日時:2017年7月1日 13時