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第壱百拾壱戦 夢 ページ17

少しずつ不器用なりに距離を詰めながら、刀剣男士を救おうとするひた向きな青年を、何故か放っておけない。

「まあな……(あの人にとっては、ただ押し付けられた事をやってるに過ぎんが)」

長門だけではない。ブラック本丸の後任として放り込まれた審神者全員に言えることだ。
ブラック本丸を押し付けられた審神者の大半が、人間不信に陥り、闇堕ち仕掛けた刀剣男士に怪我をさせられたなど被害に遭っている。

「東、お前は何があってもあの人の味方で居ろ」

「……え?神成さん急にどうしたんですか?大丈夫ですよ、僕は長門さんの味方です!」

東が政府で聞いたというあの話がどこまで本当かは分からないが、長門の味方は一人でも多い方が良い。彼は政府に命運を弄ばれているようなものだ。杞憂であってほしい。
純粋で真っ直ぐな性格をしている東なら、きっと長門の心身の支えにもなるはずだと、神成は思う。

◆◇◆

東と神成が帰った後、長門は翌日に備えて夜具に戻った。前日は部屋の割り当てが済んでいなかったのもあり山姥切と隣で寝たが、彼は今日から陸奥守、獅子王と同じ部屋に居る。

ふと今朝の夢を思い出し、何とも言えない物が胸の底に降りてくる。例えこの時代の人間があの悲劇を忘れようとも、自分だけは決して目を逸らさないで居よう。どんなに残酷な結果になろうとも。忘れてはならないのだから。

慣れない環境で朝早くから動き回ると、流石の長門も疲労を感じるようになり、思いの外すぐに深い眠りについた。その夜見たのは、この本丸の刀剣男士とかの老人が一緒に居る夢だった。
矢張り昨日と同じか、と思ったが、少し違う。かの老人も自分と同じように、少し離れたところで元気にはしゃぎ回る短刀たちの様子を見守っている。

彼は長門の許に来ると、やんわりと品の良い笑みを浮かべ、何かを呟いた。彼の声は長門には届かなかったが、言いたい事は意識せずとも伝わってきた。

──どうか彼らを幸せにしてくれ。

未練を残した彼の最期の願いだったのだろう。長門が老人へ手を伸ばそうとすると、彼は再びやんわりと品の良い笑みを浮かべる。その穏かな笑みを湛えたまま、彼は長門の後ろを示す。
老人に示されるがまま振り返ると、背後に山姥切を始め、まだ自分の刀帳でも前任の刀帳でも見た事の無い刀剣男士の姿があった。
あっと声を上げる前に周囲に桜吹雪が舞い老人は燕尾の紳士服の姿で、見慣れない礼服を纏った平野藤四郎と共に手を繋いで何処かへ向う。

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大日戦(プロフ) - ミリアさん» とうらぶのクロスオーバーでしたら千銃士という作品との物をpixivに2ちゃんねる風としていくらか投稿しております。 (2018年6月25日 1時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ミリアさん» 返信遅れました。有難うございます。ジャンプは読んでないのでよく分からないです(汗 新作書く体力もないので今はこれを完結させることに心血注いでます。ご期待に添えず申し訳ありませんm(_ _)m (2018年6月25日 1時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く良かったです。続きが楽しみです。今後他の作品を作る予定があったら刀剣乱舞とコラボかトリップか転生したリボーンかKアニメかワンピースかワールドトリガーの作品が読んで見たいです。説明が下手ならすみません。これからも無理せず更新頑張ってください (2018年6月23日 14時) (レス) id: 673ec4ec31 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - どんどんハマってくねんけど、夢主かっこいい。好きやわw (2017年12月3日 23時) (レス) id: 5d79736247 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - よよいさん» ここは暫く留守にしてpixivの方で加筆連載をしております。ストックが無くなり次第、こちらに戻ってきてこれの納得のいかないところを重点的に修正しようと思っている感じです。 (2017年11月15日 18時) (レス) id: b1d4cab38f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880  
作成日時:2017年7月1日 13時

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