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第玖拾壱戦 足利宝剣 ページ44

「長谷部や加州、今剣も鶴丸……この本丸に居る皆がお前に救われた、だから此処に在る。付喪神を侮るでない、お前の望みを変えてやるまで、決して俺は折れぬ、お前を死なせぬ。良いな」

「…………」

はっきりと長門を死なせないと断言した三日月の打ちのけには、猟奇的な危うさではなく、護る者としての強い覚悟の光を宿していた。
強い信念と覚悟と意志を映えさせ、死への恐怖と生への執着ではなく、誰かを護る為に明日を見て飛び立った彼らが、いま、目の前に居るような気がした。
無意識に伸ばしたその手を掴んだ三日月の声が、靄が掛かって霞んだ思考に、停止した脳へ響いて滲みていく。

「付喪神とはいえ神との約束は絶対だ。お前は今や、“約束”と言う名の呪詛で縛られているようなものだ」

「呪詛?」

「迂闊に付喪神と約束するでないぞ、この神域は、何でもアリなのだ。まぁ今更言ったところで意味は無いがな。どうせなら俺や他の者の願いを聞いてもらおうか」

今剣にちゃっかり便乗という形で長門に話を聞いてもらおうとするこの爺、美味しい所はしっかり狙ってくる図太さを持ち合わせている強か者である。
元々審神者になったのは、ただの寄り道のつもりで居たからであるが、よくよく三日月の言葉を考えると、“約束”を果たすまでは死ねない。
つまり“約束事”を増やしてしまえば、長門の寿命を増やせるということ。それがどんなに恐ろしい事か、政府はまだ気付いていない。勿論当事者の長門も。

「俺が足利家の宝剣として過ごした時代、同じく宝剣として共に200年近く過ごした刀が居てな。名を骨喰藤四郎という」

足利家で共に過ごした刀、骨喰藤四郎にもう一度会いたい。三日月が今まで誰にも打ち明けなかった本心だった。

「……骨喰は、俺たちの前の主……この言い方は少し語弊があるな……。俺をこの本丸で顕現した審神者によって喚ばれた際、記憶を全て無くしていた」

江戸時代の明暦の大火により、骨喰は焼け身となったらしく、付喪神として顕現しても過去の記憶は全く残っていなかった。足利家で三日月と共に過ごした日々も、覚えていなかったという。
三日月は骨喰と再び関係を築いていこうと言葉を掛けた。結局その約束は前任が本丸を引き継いだ後、すぐに葬り去られたが。

「骨喰藤四郎さんのことなら、鯰尾君がよくご存知なのでは」

「あぁ、聞いてみると良い」

骨喰の話を終えると、三日月は再びフラリと立ち上がり、言うだけ言って何処かへ行ってしまう。

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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか!私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね?現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます!(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料?とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて・・・ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません;; (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ!退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880  
作成日時:2016年12月18日 22時

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