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第捌拾玖戦 達観 ページ42

「もうその人の顔も思い出せないけど、言葉だけはハッキリ記憶に焼き付いてるんです」

「……えにし?」

「最初はどういう意味かよくわかりませんでしたが、今ならわかるんです」

生きていれば会える。失ったものは還って来ないが、いつか報われるはずだ。だから長門は生きようと思った、と続ける。教え子の死地に向かわせ、自分もいつ死のうかと思っていたが、その考えは次第に変わりつつある。
遡行軍に殺されるよりも、政府に飼い殺されるよりも、自分の意志で散りたい。せめて彼らが遺して逝ったものを護って、最期まで抗ってから散りたい。

「貴方が岩融さんとの思い出を大切にしている限り、また幸せは訪れますよ」

出来る事なら、今剣の願いを叶えてやりたい。岩融と再会させてやりたい。
だが自分は一体何処まで出来るだろうか。死が終着点であり、望みである自分はどこまで踏み込めるだろうか。

「私が出来る限り、尽力します。だから貴方は、三日月さんを支えてあげて」

「三日月……さま?」

三条派である三日月からすれば、正確に明記されていないが今剣は兄弟のような存在。同じ刀派を失う事は、肉親を失うに等しい苦しみではないか。
長門はそう考えていたが、彼らは刀であり付喪神。三日月本人がかなり達観している面もあり、多少解釈が変わって来るだろう。

◆◇◆

暫く主に寄り掛かり、一頻り泣いた後、今剣は少し乱暴に涙を拭った。

「あまり強く擦ってはいけませんよ」

「だいじょうぶです!……あるじさま、ぼくはつよいんです!よしつねこうのまもりがたななんですよ!」

源義経公の守り刀だから、自分は誇り高き武士の刀だから泣かない。今剣の確かな覚悟を見届けると、長門は小さく微笑んだ。
体躯は小さいが、激動の戦乱の渦中に呑まれた前の主を最期まで見守ってきた刀剣男士である。

「あるじさま!きのう、燭台切さんと長谷部さんがおやつをつくってくれるっていってました!おちゃのじかんになったら、みんなでたべましょう!」

10時のお茶を貰ってくると告げると、少し明るい表情になった今剣はピョイコラと飛び跳ねながら厨房へ向かう。長門はもうそんな時間か、と懐中時計を取り出す。
入れ違いで反対側から三日月が戻って来る。気を遣い今剣の邪魔をしないよう気配を上手く消していた。

「今剣は芯が強いだろう?」

「そうですね……貴方も随分……。いえ何でも」

縁側に腰掛けている長門の横に、もう一度腰を下ろすと三日月は庭に視線を移した。

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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか!私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね?現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます!(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料?とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて・・・ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません;; (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ!退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880  
作成日時:2016年12月18日 22時

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