【刀剣乱舞】帝國ノ遣イ【男主】〜弐〜

第陸拾玖戦　夕餉 ページ23

長谷部、燭台切、山姥切に手伝ってもらい、長門は雑炊、味噌汁と簡単に食べられる夕食を作った。

「水回りの仕事は終わったので、明日は手入れ部屋を何とかしたいですね、審神者部屋は出来れば改築したいです。本能的に好かん」

「まぁ……気持ちは十分わかるよ。費用の方は大丈夫なの？」

久々に纏まった食事を楽しむ刀剣男士たちを眺めながら、長門は小さくひとりごちていた。主の独り言を聞き逃さなかった隣に座っている燭台切は、改築費の心配をしている。流石オカン。

「代金は政府持ちですから、安心して良いですよ。そもそも旧軍人とはいえども手持ちの財産なんて刀くらいですよ」

「色々溜め込んでるな」

燭台切の反対側に座る山姥切が、主を見て小さく呟いた。
長門の有形財産は唯一、海軍時代から使っていた黒漆塗りの太刀のみ。いくら審神者であろうとも、莫大な本丸の改築費を肩代わり出来る訳がない。
元々長門は行動力がある意味での短気だが、ストレスを溜め込みやすい性格で、溜め込んでも自分から吐き出そうとはしない。誰かが気付いて適度に発散させなければ、後々ふとした拍子に逆鱗に触れたと同時に“遺憾の意”である。

「嫌でも溜まりますよ。あと出陣はまだ未定です。でも運営費用と資源を考えると……」

「長門君、極力政府を頼りたくないんだろう？借りを作りたくないんでしょ？」

「ええ、ハッキリ言って、嫌です。まだこの本丸を把握出来てないですから、出陣はその後ですかね」

頭を悩ませる主を見て、燭台切は苦笑いを浮かべる。最初は言葉を八ツ橋に包んで使っていた長門も、だんだんと遠慮がなくなってきた。
崩壊寸前までブラック本丸を放置していた恨みもあるだろうが、それ以前に自分を扱い辛いと判断したらブラック本丸に放り込み、殺されても自己責任と言わんばかりに責任放棄した上層部が腹立たしい。

更に長門は担当の東、神成に少しでもちょっかいを出せば私的制裁すら辞さないと、ほぼ宣戦布告を上層部に叩き付けている。
流石に権力者とはいえど軍人ではないので国際法に反すると神成が宥めると、忌々しげな表情を浮かべながら精神棒(海軍式ケツバット)で地面を叩き鳴らしていたのは記憶に新しい。最もその場を目撃したのは山姥切、燭台切、こんのすけのみだが。

「オーケー。じゃあ、長門君、お酒飲むかい？」

「はい……。というかあったんですね。無礼講と行きましょう」

どこから持って来たのかはさて置き、神祇用の神酒らしい。

第漆拾戦　精進落とし→←第陸拾捌戦　宣誓

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す