＊ ページ6
・
言っといて何だけど、『そんなことないですよ』くらいで流されるかと思ったのに。
目黒くんは私を見つめたまま、ニヤニヤと口角を上げた。
A「・・何ですか」
目「もしかして気にしてます？」
A「・・・」
目「康二、若干泣いてたなぁ」
A「・・・・」
何も言えない私を、目黒くんはむずむずと口角を揺らしながら見つめて、遂には「ぶはっ！笑」と吹き出した。
目「あー、康二に見せてやりてー笑」
『見せてやりたい』と言うからには、目黒くんも社内の私とオフの私にギャップがあることは感じているようだ。
完全なる舐めプをかまされて、不貞腐れて帰ろうとすると、「青木さんのせいで残業なんで、休憩付き合ってください」と隣に座るよう促される。
・
2人してベンチに座って、定時に上がる同僚達が横切るのを眺める。
目黒くんの長い脚が、低いベンチから床に向かって、急角度で折り曲がっている。
A「・・目黒くん、私のこと舐めてるでしょ」
目「舐めてないです。そう見えます？」
A「見える」
目「・・マジか」
「お疲れ様です」会話の途中で横切る同僚に何度も会釈をしながら、通り過ぎる人が私達をチラッと振り返るのを、横目で見る。
イケメン目黒くんが誰かと話しているのを。
ツンケン愛想なし青木が、定時過ぎに残って誰かと話しているのを。
珍しがる視線。
・
目「・・・舐めて、ないですけど」
・
目「優越感はあります」
・
目「素の青木さん知ってるの、社内で俺だけなんだと思ったら
嬉しくて」
・
真面目で、寡黙で、ちょっと抜けてる、目黒くん。
好青年のかたまりだったはずの彼が、低い声で、惑わすような言葉を口にして、いたずらに微笑む。
・
目黒くんは、もしかしたら、ちょっとした物好きなのかもしれない。
ほら、イケメンは屈折してるって言うし。うん。
だって・・私のギャップを、優越感だなんて。
・
目「青木さん、スーパーの裏の焼き鳥屋、入ったことありますか？」
A「・・知ってるけど、ない」
目「めっちゃ美味いです」
A「そうなんだ」
目「今度行きません？」
A「え？」
目「え？」
思わず目が合う。
意地悪そうに笑う目黒くんの瞳には、バッチバチに化粧した、オフィス仕様の私が映っていて。
けれど、目黒くんの瞳の色は、あの日ド近眼眼鏡を掛けた私を見た時と、変わらない色をしてた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1273人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Emi(プロフ) - この作品すごく好きなのですが、もう更新されませんか？ (6月25日 21時) (
レス) @page36 id: 0a1f78866d (このIDを非表示/違反報告)
ぶたこ(プロフ) - まどろんさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます！とても嬉しいです泣。 (2023年3月4日 4時) (レス) id: a24fabd0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶたこ(プロフ) - シラユキ。さん» ありがとうございます泣。またちょくちょく更新できるように頑張ります^^ (2023年3月4日 4時) (レス) @page31 id: a24fabd0e7 (このIDを非表示/違反報告)
まどろん(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて、最高です！！！こんなに楽しく見れた作品は久々でテンション上がりまくりです！ありがとうございます！ (2023年3月1日 22時) (レス) @page30 id: 751e143123 (このIDを非表示/違反報告)
シラユキ。 - 何周もしちゃいます…何回読んでもドキドキしちゃってます…！これからも頑張ってください！ (2023年3月1日 20時) (レス) @page30 id: c787a593b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぶたこ | 作成日時：2022年10月24日 5時
