その日から ページ4
・
その日から、目黒くんは社内でも明らかに距離を近づけてくるようになった。
朝廊下ですれ違う時、以前は「おはようございます」と会釈するだけだったのが、「今日寒いですね」など時候の挨拶を一言加えてくるようになった。
目黒くんに割り振った仕事の説明をする時、以前は真顔で「了解です」と目も合わせずに受け取るだけだったのが、やたら私の横顔を見つめてくるようになった。
会議室に早く来すぎて2人きりになった時、以前は席が隣だろうと沈黙を貫いていたのが、「今日のセール何買います？」と地元話をふっかけてくるようになった。
それは、完全に、あの日、彼が私のギャップを見たからで。
・
好かれてる。懐かれてる。イケメンに毎日のように話しかけられて、私もそう思いたい気持ちは少なからずあるけれども。残念ながらこれはきっとそうじゃない。
これはいわゆる、舐めプってやつだ。舐められているのだ、私は、目黒くんに。
ツンケンしてこうるさく仕事の注意をしてきた女上司が、いざ正体を明かすと女子力の欠片もない干物女だったと。私は『そのレベルの女』だったのだと、目黒くんに判断されたのだ。
・
A「誤字脱字が過ぎるから、明日までにもう一度見直して？あとレイアウトもこれだとどこが重要なのか分からない。サンプル送っとくからそれ参考にやり直してみて」
デスクに座る目黒くんと、その隣の向井くんに、チェックした資料を見せながら指摘する。
立ったまま話していたのがよほど高圧的だったのか、向井くんは俯いたまま「・・はい」と泣きそうな声で資料を受け取った。
・・対して目黒くんは、「了解です」とダメージの欠片も受けていない声で、私をじっと見上げている。私じゃなくて資料を見ろ、資料を。
・
向井くんの反応は少し大袈裟にしろ、私は後輩には少しばかり怖がられているらしい。
こちらから話しかけることもないので、好かれることもない。ましてや私に舐めた態度をとる後輩なんて、これまでいなかった。
・
目「青木さん。
今度から俺らが青木さんの席行くんで、名前呼んでください。アドバイスもらってるのに、青木さんがわざわざ俺らの席まで来る必要ないです」
・・優しさだか口答えだかわからん強さで、目黒くんが言う。
舐めプだ。完全に舐めプだ。
A「・・分かった。ありがとう」
思わずため息を吐くと、向井くんが涙目で「おいめめぇ・・！」と目黒くんを揺すった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1273人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Emi(プロフ) - この作品すごく好きなのですが、もう更新されませんか？ (6月25日 21時) (
レス) @page36 id: 0a1f78866d (このIDを非表示/違反報告)
ぶたこ(プロフ) - まどろんさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます！とても嬉しいです泣。 (2023年3月4日 4時) (レス) id: a24fabd0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶたこ(プロフ) - シラユキ。さん» ありがとうございます泣。またちょくちょく更新できるように頑張ります^^ (2023年3月4日 4時) (レス) @page31 id: a24fabd0e7 (このIDを非表示/違反報告)
まどろん(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて、最高です！！！こんなに楽しく見れた作品は久々でテンション上がりまくりです！ありがとうございます！ (2023年3月1日 22時) (レス) @page30 id: 751e143123 (このIDを非表示/違反報告)
シラユキ。 - 何周もしちゃいます…何回読んでもドキドキしちゃってます…！これからも頑張ってください！ (2023年3月1日 20時) (レス) @page30 id: c787a593b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぶたこ | 作成日時：2022年10月24日 5時
