今日を、生きれるかな【降谷零】

不眠の痛覚―2 ページ10

母は日中、寝ていることが多かった。

だから、家のことを頼まれるのも多かった。








どれもこれも簡単なことだというのに、私は要領が悪くてよく母を怒らせてしまった。


怒らせた時は決まって叩かれる。
けれど、これは“暴力”じゃなくて“躾”だと言うことを知っている。





ご近所はあらぬ噂をするようになった。
私の体にアザがあるのは虐待を受けているからだ、とか。



勿論、そんなわけはない。

テレビで出てくる虐待児はもっと酷いことをされているのだから私は虐待なんかされていない。






父は、家に帰らない日が多くなった。
それを母は嫌がって、私を叩くのも恒例になった。

でも、それは仕方がないことだ。
少なからず、父の遺伝子を引いているのだから私を父と重ねてしまうのは仕方がないことだ。





それに、外の人間の方が怖いに決まっている。
ニュースでよく凶悪な事件が起きていることを知っているから。

外の大人達は全員このニュースと同じようなんだと思っていた。


「虐待を受けているでしょ？」
と心配する声も嘘。

「痛いわよね」
という声も嘘。








だから、嘘には嘘で身を守るしかない。

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