■.(少し変更) ページ10
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「ともだち、ともだちか……」
”『ともだち』とは”? これはあまりにも不明瞭で哲学的な問いだろう。単語自体の定義など有って無いようなものだ。__Aにその問いの返答を求めるなら、それは『未知』だ。彼女が”未だ知らず”、探求し続けた事だ。傷付くものだと知りながら、いち芸術家である彼女の好奇心は何年もその存在を求め続けた。
簡潔に言えば__嬉しかったのだ。
(鳴上嵐は、私とともだちになりたいのか……。そうか……)
どうしようもなく高揚感が込み上げてくる。__だからだろう。校門に続くはずの通路のど真ん中に、円形と、その内側に複雑な紋様が緻密に描かれたアートに、『未知』に、それを描いた”作者に”興味を持ったのは__。
誘われるように、導かれるように、自然とAの手は伸びてゆく。
「! チョット。キミ、」
「__美しい」
「エッ」
「なんて美しい線描画だ……。君が描いたのですか?」
「! そウ、だけド……」
「なるほど……」
艶かしくも、熱の籠った瞳。指先から少しずつ触れてゆく様は、そのことごとくが官能的で、男であろうと女であろうと、畏れ多くも烏滸がましく、理性のタガが外れそうになっていることだろう。
「はあ……なんだ、見ているだけで唆られる……。チョーク……黒板アートだったか、それと類似しているようですね」
逆先夏目はただ
__違う。彼女は、次元が違うんだ__。
「ラフ画はありますか?」
____ゴクリと息を呑む。
「ノートニ、いくつカ……」
「是非私に見せてほしい。傑作の予感がする……!」
「〜〜ッ______離れて」
__逆先夏目は考えた。咄嗟の判断で出た本音で、どうにか彼女を少しでも遠くにできないかと。
__逆先夏目は考える。悲しげな瞳の彼女に、どう誤解を解くべ、いや違う。慰め、も違う。笑顔に、じゃなくて、____。
「……そうか」
(これもウ、ダメかもネ……)
__逆先夏目は悟った。彼女が、自分の手に負えない事を。
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作者名:花厳 | 作成日時:2023年5月12日 16時