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「あ、の、先輩……」
「……。？ はい、なんでしょう」
「ﾋｪｯ」
(ご尊顔がｯｯｯ、こんなにも近くｯｯｯ……！！！)
(ありがとう前世で徳積んでくれた私ｯｯｯ)
ガーデンテラス隅に位置するテーブル席。朗らかな陽気がAさんを神々しく照らしていた。柔和な眼差しがあまりにまぶしくて、私は未だに目を合わせられてない。
(仁兎先輩は放送委員で行っちゃったし……)
フラットに対面なんてできるわけもなかった。"立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花"ということわざは、彼女のために作られた言葉なのだと納得するほどの
世界のあらゆる『美人を表す言葉』を用いたとしても表現し切れない。どんな言葉も彼女の前で自ら頭を垂れるように劣る。
そんな人がすぐ隣にいて、自分と会話をしているという信じ難い奇跡。夢か幻覚かと見紛うほどの非現実味。
＿＿＿＿＿＿そして何より二人きり！！！！(最重要)
「大体理解したが、さすがに行事が多いようですね……。その都度駆り出されるとなると、人手が足りないのも頷ける」
「…………」
「プロデュースか……面白そうだ」
「ﾋｪｯ」
(声もいぃ……)
＿＿あまりにも声が良かった！！ 晴れた朝の空気みたいに心地好い声。一言一句聞き漏らすことのないよう神経を買いたての包丁がごとく鋭利にするけれど、今回は意味がないみたいだった。
Aさんの美をもろ視界に入れた生徒たちは、揃いも揃って口をあんぐりと開けてはおぼんを落とし、ドミノ倒しの要領で倒れていく。ある意味うるさいけど、普段の倍は静かだった。
「…………にしても、ここは人が多いな」
「ﾋｪ、そ、そうですね！ お昼ですから……！」
＿＿＿＿この時、正直私はAさんの表情をちゃんと見ていなかった。畏れ多いとか、烏滸がましいとか、そんなのはただの言い訳なんだって。数時間経ってから後悔した。
「……そうか。昼は人が多いのか、ここは」
＿＿だって、私がガーデンテラスに案内さえしなければ。
「先輩……？」
＿＿＿＿こんな、人混みの多い所に連れて来さえしなければ。
「……ごめん、あん、ず＿＿＿＿」
「っっ先輩！！！！！」
Aさんが倒れることなんてなかったんだから。
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作者名：花厳 | 作成日時：2023年5月12日 16時
