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「…………なーんてなっ! わかってるわかってる。おまえにはまだこーいうの早いんだったよな〜」
沈黙の数秒後、雰囲気をガラリと変えて、ひとりで納得したようにうんうんと頷く彼に苛立ちを覚える。
今にも泣き出しそうな声音かと思えば、突如としていつもどおりらしい自由奔放なレオに戻っていた。
あの行為が、彼の心境に変化でも与えたのだろうか。
「おい、頭を撫でるな。私は子どもか」
「だって、わかんないんだろ? 好きとか、愛してるとか」
「……否定は、しないが。だからと言って、」
「可愛い可愛い♪」
純粋な子どものようでいて、実の所彼は大人びている。暖かな森の双眸が、「よしよし♪」と優しく撫でる手が、『私の知らない私』を知っているかのように見て取れてしまう。
(……ときどき、無性にレオの視界から逃げたくなる)
「おぬしら、人目も
__ぐるぐると巡る思考が、背後の声にかき消された。
「…………レイ」
「目が据わっておるな、月永くんや」
「邪魔しにきたのか」
「人聞きが悪いのう。これもAを気遣ってのこと」
「A……? おまえら初対面のはずだろ?」
「おぬしに話す義理はないぞい♪」
(殺意すら感じる眼光……月永くんもまた、雫石Aの被害者というわけじゃな)
__下界の者を、ふわふわと漂いながら俯瞰する『魔女』
末恐ろしいのは、『魔女』に一切の自覚がないこと。
「ほれ、Aも嫌がっておるじゃろ。離してやらんか」
「ヤだ」
(こやつ、自分は拒絶されぬとわかった上か……)
「てゆーか、Aまだ約束守ってないし……」
月永くんのように、時間をかけて懐に入った者もおるが。
__あの日、初対面であるはずの仁兎くんがわかりやすく兆候を見せていた。いともたやすく人の心を、それも無自覚に奪う彼女を、『魔女』と呼ばずしてなんと呼称しよう。
「レオ……」
「なに」
「……。君には、話さなければと思っていました」
「ふーん」
「ずっと、どう言えばいいのか迷っていた。だから、その__」
「いーぞ、待ってやる。それくらい、おれが大事ってことだろ」
「……そう、だな。君は大事だ」
思いっきり蚊帳の外じゃが__あぁ恐ろしい、恐ろしいのう。
(可哀想な子じゃ。その先はただの奈落じゃろうて……)
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作者名:花厳 | 作成日時:2023年5月12日 16時