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□. ページ13

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「…………なーんてなっ! わかってるわかってる。おまえにはまだこーいうの早いんだったよな〜」



 沈黙の数秒後、雰囲気をガラリと変えて、ひとりで納得したようにうんうんと頷く彼に苛立ちを覚える。

 今にも泣き出しそうな声音かと思えば、突如としていつもどおりらしい自由奔放なレオに戻っていた。

 あの行為が、彼の心境に変化でも与えたのだろうか。



「おい、頭を撫でるな。私は子どもか」

「だって、わかんないんだろ? 好きとか、愛してるとか」

「……否定は、しないが。だからと言って、」

「可愛い可愛い♪」



 純粋な子どものようでいて、実の所彼は大人びている。暖かな森の双眸が、「よしよし♪」と優しく撫でる手が、『私の知らない私』を知っているかのように見て取れてしまう。

(……ときどき、無性にレオの視界から逃げたくなる)



「おぬしら、人目も(はばか)らず何をイチャついておるんじゃ」



 __ぐるぐると巡る思考が、背後の声にかき消された。





□□□





「…………レイ」

「目が据わっておるな、月永くんや」

「邪魔しにきたのか」

「人聞きが悪いのう。これもAを気遣ってのこと」

「A……? おまえら初対面のはずだろ?」

「おぬしに話す義理はないぞい♪」


 
(殺意すら感じる眼光……月永くんもまた、雫石Aの被害者というわけじゃな)



 __下界の者を、ふわふわと漂いながら俯瞰する『魔女』

 

 末恐ろしいのは、『魔女』に一切の自覚がないこと。



「ほれ、Aも嫌がっておるじゃろ。離してやらんか」

「ヤだ」

(こやつ、自分は拒絶されぬとわかった上か……)

「てゆーか、Aまだ約束守ってないし……」



 月永くんのように、時間をかけて懐に入った者もおるが。

 __あの日、初対面であるはずの仁兎くんがわかりやすく兆候を見せていた。いともたやすく人の心を、それも無自覚に奪う彼女を、『魔女』と呼ばずしてなんと呼称しよう。



「レオ……」

「なに」

「……。君には、話さなければと思っていました」

「ふーん」

「ずっと、どう言えばいいのか迷っていた。だから、その__」

「いーぞ、待ってやる。それくらい、おれが大事ってことだろ」

「……そう、だな。君は大事だ」



 思いっきり蚊帳の外じゃが__あぁ恐ろしい、恐ろしいのう。



(可哀想な子じゃ。その先はただの奈落じゃろうて……)

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作者名:花厳 | 作成日時:2023年5月12日 16時

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