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「生まれつきじゃないんだよね」とAはため息をつく。
「この目も、髪も、ホントは真っ黒だったんだけどなー…」
「へぇ、そんなこともあるんだ。そうなったのはいつから?」
「一年半くらい前。」
彼女は胸元辺りまである自分の髪を掴んで、店内の照明に透かしてみせた。
Aの髪は、生え際は真っ黒であるのに毛先は雲みたいに真っ白で、まるでパレットに広げて作ったようなグラデーションになっている。
細い何束かの髪は生え際からすでに毛先と同じように白くなっていた。
透かされた髪先は店内のオレンジがかった照明でもキラキラと光を通していた。
「この髪も赤い目も、何回見てもまだ慣れない。」
「原因は分かってるのか?」
「原因というか、1回死にかけて目が覚めたらこうなってた。」
毛先をくるくると遊ぶAは本当に嫌そうに顔を顰める。
「これすごく目立つから嫌なんだ。だから目なんか特に、人と話すときどう思われてるんだろってめちゃくちゃ気になるし。」
「ごめん。」
「謝んないでよ。」
「いや、女の子の目を無遠慮に見つめてたなと思って。あまりにも綺麗だったから見とれてたんだよ、お世辞抜きで。」
宝石みたいだ、と続けるとAは困ったように笑う。
「この赤い目が?」
「その赤い目も、その髪も」
Aの髪の真っ白な部分は光を通す。
あの公園で日光を浴びれば、彼女の髪はきらきらと金色に染まるのだ。
「んふふ。ありがとう。」
先程ケーキを頬張った時のように笑いながらAは言った。
「私もね、クロロの瞳が好きだよ。澄みきっていて、風も吹かない静かな夜みたいで、不思議な感じがする。」
「…そんなことを言われたのは初めてだ。」
感情をあまり映さない目は自分でも不気味なものなのに。
思わぬ不意打ちにクロロの心は一瞬動揺した。
彼女の優しい声音は不思議と心に響く。
「お世辞なんじゃないか」とか「媚を売られてるんじゃないか」とか、そういうガードを通り抜けて真っ直ぐに届くもんだからタチが悪い。
店内のBGMが今度はクラシックピアノに変化した。
「あ、」とAが声を上げる。
「クロロの好きなショパンの幻想曲じゃん。」
「……49番だな。」
クロロが照れ隠しに煽ったコーヒーはもう冷めていた。
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https://youtu.be/GuRhr1LPUbY
ショパン 幻想曲 op49
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます!私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね!私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです!とっても素敵ですよね。応援しています! (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑!更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして!団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました!出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます!そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽへみあん | 作成日時:2019年7月21日 0時